会長の”三行日記”

2013年12月

2013.12.27

1年の終わりに No.2506

 とうとう今年最後のカキコミとなりました。1年間長いようで短くも感じた今年でしたが、いろいろとお世話になりまして有難うございました。無事終わることができそうで何よりも嬉しく思っております。

振り返ってみますと、比較的仕事の方は順調ではなかったかと思われます。でも寂しいのは長年の顧客でもあるJTの平塚工場があと2年で工場廃止となることです。数年前の小田原工場廃止に続いて平塚まで無くなってしまうのです。

どちらの工場も私の本当に思い入れの強い工場だけに、残念な発表になってしまいました。もっとも工場縮小はこの平塚に限らず、製造工場は全国で宇都宮、磐田、大阪、九州福岡の主要4工場しか残らず、他の工場はいずれも廃止となってしまうのです。

やはり人々のタバコ離れが影響しているわけで、合理化をせざるを得ない事情となっているみたいです。思い出してみると、私がサラリ-マンとして社会人になりたての頃はこの工場が全国に点在していたのです。

そして出掛けたのは北は函館から南は沖縄、鹿児島など、全国数多くの至るところだっただけに、懐かしく当時を思い出すことができます。本当に良き時代でした。またこうして現在の仕事ができているのも、JT様(当時は日本専売公社)から培った技術のお陰と言っても過言ではないでしょう。

それだけに残念な結果なのですが、せめて存続する2016年3月までは精一杯、私どもなりに努めたいと思っています。しかしながら、弊社もこのJT様のいろいろな工事で知り合ったことで、関連先の企業や人々に救われ現在まで続いてきたとも言えるわけです。

その方々に新たな顧客を紹介していただきながら、少しずつ展開が図ってこれたのです。やはり企業は人なりと言われるとおり、会社内部の人という存在に限らず、外部の人とのお付き合いやお互いの信頼という要素が大切になってくるものです。

現在は経営理念にも掲げてあるとおり、益々その小回りを利かせて、少しでもお客様に喜んで頂けるよう努めております。その成果なのか、声をかけていただくお客様も増えてきているのが何よりも嬉しいことです。

一方、国内の動きに目を向けてみると、昨日もこの欄で触れた靖国参拝はアメリカはじめ、予想以上に各国からの非難が少なくないようです。中韓以外からも日本の右傾化を慮る声となっているのです。

やはり良識と諸事情からの判断に欠けていたとも言えるものでしょう。このように私たちが知らないままに、この国があらぬ方向に進んでしまうことは困ります。世界の中で孤立化するのではなく、平和を掲げる我が国だからこそできることを目指さなければと考えます。来年はそういった意味で、私たちなりの目線でチェックがきっと必要になってくることでしょう。

どうぞ来年も変わらぬご交誼をよろしくお願い申し上げます。来る年が素晴らしい年になるよう祈念いたします。来年は1月6日から始業しますが、6~7の2日間は年始のご挨拶回りのためカキコミは8日より再開させていただきます。

2013.12.26

靖国参拝 No.2505

 安倍総理が靖国参拝を行いました。なぜこの時期にというのが多くの人の思いなのでしょうが、ギクシャクしている近隣諸国との関係改善より、個人の信条を優先したと捉えても仕方がないと言えるものです。

新聞でも伝えるように、多くの国民の反対を押し切って強硬可決した特定秘密保護法案や、来年4月からの消費税導入、そしてここにきて沖縄の普天間基地問題に目途がたったからということなのでしょうが、周囲の言葉にも耳を貸さない独断専行とも言える行為ではないでしょうか。

それにしても沖縄の仲井真知事があっさりと白旗を揚げたのにはびっくりしました。地元選出の国会議員といい、選挙での公約が何なのか考えさせられることです。このようにやること為すこと全て順調に回っているように思える安倍政権なのでしょうが、これが全て国民の合意の上に基づいているわけではないゆえ、思い上がってはいけません。

参拝を行った今日26日は政権発足から丸1年経った節目の日と聞きますが、今行かなければ政権終盤でも行けなくなると周囲の反対を押し切り、この参拝に及んだと言われます。

確かにここで映画も封切りになった「永遠のゼロ」のように、祖国のために自分の身を犠牲にしてまで守らなければいけなかった尊い命に、敬意を表さなければいけないのは私とて何の異論もありません。現在の日本の繁栄がそうした尊いものに基づいていると言っても過言ではありません。

でもそうした一個人の感情を、国を大きく取りまとめる総理という立場では、切り離して考えなければいけないものではないでしょうか。総合的な判断が必要となるわけです。首相の読みでは一向に開く目途のたたない対中韓首脳会談ゆえ、今こそかえって参拝しやすいとのことだったのでしょうが、これではいつまで経ってもこじれるばかりです。

まさに開き直っているとも捉えられてしまう行為なのです。また頼りにしているアメリカにまで失望しているという声明を出されてしまいました。今、韓国では朴大統領が必要以上に日本バッシングを行っています。

そして中国は防空識別圏なるものを拡大して日本に益々挑戦的な態度を見せている昨今です。こうした動きに対して、日韓関係の改善や尖閣諸島を巡る日中の緊張緩和を目指す上では、まず日本から動かなければ何も変わるものではありません。

それゆえに今回のこうした行為は必要以上に相手方を刺激することになるのではないでしょうか。安倍首相は今回の参拝を不戦の誓いを立てるためとも称していますが、その言葉とは全く真逆な行動にも思えることです。政治や経済、そして私たち企業分野においても、トップの責任と判断の重大さを知らされています。

2013.12.25

失敗は成功の引き出し No.2504

 楽天球団がマ-君にポスティングシステムでの大リ-グ移籍を認めました。それでこそ日本一の楽天です。国民の大多数を味方につけ、夢を叶えようとしている若者の前途に水を差すような真似をすれば、球団への大きな批判になりかねないと判断した結果でしょう。

新聞にも書かれていたとおり、目先の損得より愛されるチ-ムへの道を優先した結論に拍手を送りたいと思います。さて元プロ野球投手の工藤公康さんと、元陸上400mハ-ドル選手の為末大さんの対談を目にしました。

失敗は必ず成功の引き出しになるということです。最近いろいろな解説書に「こんなやり方をすれば成功します」なんてことがよくありますが、為末さんはそんなことは嘘っぱちと切り捨てています。

そんなに人生は甘いものではなく、逆に簡単ではないプロセスがあるからこそ、求めていたものを掴んだときの喜びも大きいと言われています。そして工藤さんが言うのには、最近は失敗を恐れる人が多いが、失敗は必ず次の成功につながるための引き出しになると指摘しています。

だから今後は指導者として、失敗を恐れないという感覚を育ててあげたいとのことです。そして実際に記録を出す選手、長く続ける選手には前向きに物事をとらえ、すぐに行動に出る人が多いと指摘します。

ですから動くことが大事で、本気でやりたいと思った人は動くもので、失敗を恐れて動けないのは本気で考えているのではなく、どうしようと迷っていては何も生み出すことができないからです。

そして為末さんがロンドン五輪の年、フランスのシャルル・ド・ゴ-ル空港に貼ってあったポスタ-のことを語っていました。そこには片足が義足の女の子が足をハ-ドルに乗せている写真があり、次のような内容が書かれていたそうです。

事故で右足を失い、左足が残った。右足を見て生きるか、左足を見て生きるか。自分は「有る」ものを見て生きることを希望と呼ぶ、と。要は、前を向いて生きるということは、そこに有るものを見ていくということだと指摘しています。

いつまでも失ったものに悔いることなく、立ち止まらずできることの方を見て、それに対して最大限の努力を払うということです。すぐ行動に繫げるということは、私たち小さな企業を営む者にも課せられた大きなテ-マです。

少しずつ成果が出てきているものの、小さなもので満足せずさらに前進が求められています。今年も残すところあと僅かとなり、年を越すことなく今できることに専念しなければと思っています。やはり行動なくして明日に繋がりませんね。

2013.12.24

マ-君の去就 No.2503

 楽天の田中将大投手がポスティングで大リ-グ入りの希望を表明したのですが、楽天球団は一向にその態度を明らかにしていません。ご存知の通り、日米間で新たに取り決めとなったポスティングの新制度では、現在所属する球団への補償額は最高で20億円ということになりました。

新制度ができる前までは、一説には80億から100億円と言われていたその額だけに、期待していた球団には20億円という額は大きな不満が残るものと思われます。何しろ80~100億円と言えば、ここ数年の自球団選手のみならず、助っ人として獲得したい選手の報酬額に当てることができるからです。

でも不満が残っていようと既に「賽は投げられた」わけですから、新制度に従うしかありません。また田中投手のことを考えても、今シ-ズンこれだけの成績を挙げ、球団初優勝に大きな貢献を図ったからには球団としても少なからぬ処遇を考えなければなりません。

本人は至っていじらしく、球団の決定に従うだけですと述べていますが、そのモチベ-ションは既に日本からは遠のいているものと思われます。何しろ今シ-ズン24勝0敗、しかも球団初優勝、また日本シリ-ズでも宿敵・巨人を倒しての堂々たる日本一を獲得したのです。

ですからこれ以上の活躍はもう残せないもので、日本ではやることは全てやり切ったという思いなのでしょう。そこで無理に繫いでいても日本では今シ-ズン以上の活躍は望めないと思われますし、お互いの利益にはならないのではないでしょうか。

またお金のことなどもあって無理に球団に繫いでいては、楽天球団そのもののイメ-ジも悪くなるというものです。楽天は今シ-ズンの優勝で、被災された東北の方々にも大きな夢と希望を与えてくれました。それだけに新たなファンも増えるだろうし、大きなイメ-ジアップにも繋がったものと思われます。

それゆえに球団の良きイメ-ジを消すことなく、気持ちよく田中投手を送り出してやったらどうでしょうか。有能なアスリ-トであればこそ、その先の一段高いものを目指したいものです。ですからいつまでも延ばし延ばしすることなく、いち早くその去就を決めてやるべきです。とにかく来年は海の向こうから飛び込んでくる勇姿を観たいものです。

2013.12.20

山本昌邦氏講演より No.2502

 ついに猪瀬東京都知事が辞任しました。初めからこうなることが予想されていただけに、もっと早く潔く辞めるべきでした。政治家にはこうした金がつきものですが、あまりにもガ-ドが甘すぎました。誰か相応しいクリ-ンな人を探したいのですが見つけるのはやはり無理なのでしょうか。

さて先週の土曜日、三島駅前の日本大学で開かれたファルマバレ-セミナ-に参加してまいりました。第1部としての講演はサッカ-の元全日本監督の山本昌邦氏の講演だったのですが、少しその内容を紹介したいと思います。

お話の中で強調されていたのが、本当に良い選手とは90分を超えた時間帯で得点できる選手だと言われていました。一流選手ほど高い目標を持っていて、通常の時間帯の90分ではなく、前回のワ-ルドカップ決勝戦のスペイン-オランダ戦のように延長の118分に何ができるかということがポイントのようです。

注目される選手は皆、技術、戦術、体力面で特に優れていますが、やはり心の問題が大切だと指摘します。勝つことが大切ではなく、勝とうとすることが大切で、最後まであきらめない選手が一流と呼ばれる所以とのことです。

それは結果にも表われていて今シ-ズン、残りの15分で一番点を獲ったのが大迫、次が柿谷という今をときめく両選手です。また記憶にもまだ残っているでしょうが、なでしこがワ-ルドカップで宿敵・アメリカを倒し、世界一になった決勝戦の延長で、117分という土壇場で同点に追いついたのが沢選手のゴ-ルです。

これが沢選手がス-パ-スタ-と呼ばれる所以です。また2002年のワ-ルドカップで、選手枠23人の最終追加で選ばれたのが中山、秋田の両選手です。ゲ-ムには多くは出れなかったものの、この二人のお陰でチ-ムがまとまった、いわば23人が入っている樽の修復材の役割を果たした、精神的支柱の存在だったようです。

この中山選手、技術だけならこれといって特筆されるものを持ってはいませんが、強いハ-トという面では人の何十倍もの強靭なものを兼ね備えているそうです。ですからフランスでのワ-ルドカップの試合のように、脚を骨折したにもかかわらず、ずっと試合終了まで走り続けていたことは、今でも多くの人の語り草になっています。

そして演題は「心をつかむ人材育成術」ということでしたが、自身の監督としての経験からこんなことも言われていました。選手を集めて話す際、主語の使い方に気をつけるということです。

結果がうまくいったときはお前たち、君たちと呼びかけ、努力したことをほめることでよいのですが、一方そうでなく、うまくいかなかった場合は、我々とか俺たちという表現を使うと言われていました。その責任がさも選手だけのように誤解されないためです。

また相手と面した時に、自分は低い方の椅子に座り、相手の話を努めて聞いてやることが大切だと言われていました。それから自分の役割としては教えるのが仕事ではなく、気付かせることが必要だと述べていました。結果を変に問わず、やはり自信を持たせたいからでしょう。

最後に一番印象に残った言葉としては「苦しい状況になったときこそ、その人間の真髄が見える」と話されていたことです。冒頭に戻りますが、やっとここで辞職した猪瀬前知事を見ても、そのことは明らかだと言えますね。

2013.12.17

コインパ-キングの落とし穴 No.2501

 よく使う駐車場の中にコインパ-キングがあります。人がいなくて車体の下のバ-が上下して管理しているものです。駐車して数分するとこのバ-が上昇してきて、車の移動ができなくなるわけで、戻ってきたときに時間により精算される仕組みになっています。

このコインパ-キングで最近、トラブルが増えているそうです。よくその駐車料金表示には1日最大○○○円という看板を見かけます。この表示に少し注意をしなければいけないところがあるのです。

というのはこんなケ-スがあるのです。あるコインパ-キングでの話です。看板には「日祝24時間最大1500円」と書いてあるので、日曜祝日の連休に午前8時から48時間とめて、計3000円と思っていたのですが、実際にはその3倍以上の料金をとられたのです。

これにはカラクリのようなものがあって、24時間1500円は「1回限り」であり、次の24時間には単位時間ごとに料金がかかり、その表示どおり、午前8時~午後5時は15分200円、午後5時~午前8時は最大700円ということで、しめて9400円かかってしまったのです。

そして看板をよく見ると、小さな文字で「1回限り」と書かれていたのです。それも近づかなければ見えないくらいの小さな文字なのです。でも運営する業者側から言わせれば、「看板はデザイン性を考えてそうなっている。誤解するのは利用者がちゃんと確認していないからでは」とのことですが、如何せん不親切のようにも思えるものです。

言い換えれば利用者が誤解しやすいような表示にもなっているのです。こうしたトラブルは年々多くなっているみたいですが、実際よりも著しく良く見せかけて消費者を誤解させるため、景品表示法違反にあたる可能性があると言われているものの、業者側が今までに行政指導など受けた例はないと言います。

ですから利用者がその内容を確かめ、注意深くなる必要があるわけです。私も月に何回か静岡まで車で出掛けていますが、この駐車場には結構、敏感になっているものです。それは以前、少しとめただけで2000円近く駐車料金を取られた経験があるからです。

このときの表示は確か20分300円でした。ですから2時間近く駐車すればそのくらいの金額になるわけです。今はこうした失敗体験が活きているわけで、駅から少し離れたところにとめるようにしています。

このコインパ-キングにはいろいろな料金設定があるわけで、繁華街から離れた場所ほど安くなっているものです。従って無理に近くにとめる必要はないもので、健康にも良いし、少し歩いてもその方がずっとお得ではないでしょうか。

明日から2日間、年末の挨拶回り等で会社を留守にするため、カキコミは休ませていただきます。

2013.12.16

恐怖の専制国家 No.2500

 先週は急遽、1週間に亘る出張工事が発生したため、カキコミが全然できず失礼致しました。でも暇でやる仕事がないのに比べたら、忙しいのが何よりで有難いものです。やはり年末はこうでなくてはいけません。

さて、カキコミを中断している間に、お隣の北朝鮮ではすごいことが起きていました。亡くなった父親・金正日(キムジョンイル)の、実の妹の夫に当たる張成沢(チャンソンテク)氏が処刑されて亡くなったのです。義理とはいえ、金正恩(キムジョンウン)第1書記の叔父に当たるのですが、国家転覆罪のような罪を着せられ、裁判が終わるや否や死刑執行されたのです。

張氏の失脚が伝えられた後、まさか処刑はないだろうとの見方が大部分だったのですが、人々の予想が大きく外れてしまいました。まさに過去の世紀に見られるような恐怖政治そのものなのです。

張氏は自国の重要経済部門を任されていたとのことですが、「国の重要経済部門をすべて掌握し、内閣を無力化することで国の経済と人民生活を破局に追い込もうと画策」したなどとして、経済の停滞を全て張氏の責任として糾弾されたのです。

でも主要な政策は全て最高責任者の決裁を受けているはずですから、言いがかりのようなものなのでしょう。要は金正日から後見役として指名された張氏が、金正恩にとっては鬱陶しくなっていたのではないでしょうか。

また次第に張氏の持つ人心把握力や社交性に危機感を抱き始めたのでしょうか。今朝の伝えるニュ-スでも、金正恩の演説の途中、張氏が敬礼が遅いとか、背中をしっかりと伸ばしていないなど、また拍手の仕方に誠意がこもっていないとも指摘され、反逆分子のように扱われていました。

これなど、まだ金正恩の国家君主としての確立されていない自信のなさや、不安定要素を裏付けるものではないでしょうか。それでも今後、粛清といって張氏に近かった人への弾圧が続くものと思われます。その数、2万~3万とも言われているだけに恐ろしいものです。

また一方では張氏の処刑の裏には、その妻・金敬姫(キム・キョンヒ)の激しい嫉妬があったのではないかと言われています。張氏は女性関係の噂も絶えなかった人と言います。それだけに嫉妬に狂った妻が夫を貶めたという話もありえないことではありません。

とにかく恐ろしい国です。このようなことを通して、金正恩は絶対的君主としてその地位を否応なく国民に知らしめているのでしょうが、その効果はいかがなものでしょうか。貧富の差が激しく、不平不満が渦巻いている国民の間からは弾圧に負けない激しい抵抗が必然的に生まれるのではないでしょうか。

2013.12.06

あれから1000日後の命 No.2499

 こんなに尊い命があるのですね。今週の水曜日の12月4日は東日本大震災の発生から1000日目に当たると言います。1000日後の命と称してあの地震の最中、大変な思いをして授かった命について、下記のように記していました。

おびただしい命が奪われた一方で、あの日に生を受けた命もある。悲しみに覆われた地域で芽生えた小さな命は、将来への希望にも映る。誕生から1000日となる2歳8カ月の子どもと家族の姿を追った。

宮城県石巻市の仮設住宅に暮らす会社員永沼博之さん(30)、千尋さん(30)夫婦の次男珠音(しおん)ちゃん(2)は2011年3月11日午後3時18分、余震が続く中、市内の医院で産まれた。千尋さんは分娩(ぶんべん)台からすぐに下ろされ、看護師2人に抱えられて3階から屋上に向かう階段の踊り場に上がった。

しばらくすると津波が1階まで押し寄せた。「体はふらふらで寒かった。何より珠音が無事でよかった」と千尋さんは振り返る。同じころ、珠音ちゃんの曽祖父津田司郎さん=当時(79)=が津波に巻き込まれたとみられる。11年5月下旬、珠音ちゃんが産まれた医院に近い場所で遺体で見つかった。経営する海運会社も近く、いずれかに向かっていた可能性がある。

「最期の姿が分からないのが心残りでね。父は珠音の誕生をとても楽しみにしていた」。珠音ちゃんの祖母で津田さんの長女鶴岡弘美さん(52)は言葉を詰まらす。同じ日に、誕生した命と、帰らぬ旅に出た命。家族は思いを重ねる。「おじいちゃんは誰にでも優しく、たくましい人だった。いいところを珠音が受け継いでくれたら」と千尋さん。

食べ物の好みや顔も似てきたという。「2人とも赤飯が好き。ますますそっくり」と鶴岡さんは目を細める。珠音ちゃんはすくすく育つ。人気グループ「EXILE(エグザイル)」の楽曲に合わせて体を動かす。兄の小学2年蓮翔(れんと)君(7)をまねてブロックや折り紙遊びがお気に入り。「希望を持って、思い通りの人生を歩んでほしい」。千尋さんはそう願っている。

童話「ヘンデルとグレーテル」がお気に入り。「これ、怖いんだよ」。魚類図鑑の中では南米に生息する淡水魚ピラルクが好き。「大きいの。ガブリ、しないよ」。仙台市青葉区の瀬川虎ちゃん(2)はおしゃべり好きな男の子。サッカーJ1ベガルタ仙台所属の仙台大派遣コーチ瀬川誠さん(39)、妻史佳さん(40)の長男だ。

史佳さんは2011年3月11日、仙台市内の医院で陣痛に耐えていた。分娩(ぶんべん)台に乗る直前だった午後2時46分、激しい揺れが襲った。院内は停電しガラスや機材などが散乱。誠さんに付き添われ外に出た。看護師が叫んだ。「(子宮口が)全開です」。直ちに産む選択しかなかった。

史佳さんは1階受付の裏にあった簡易ベッドに座り、誠さんに羽交い締めにされる姿勢で固定され、息んだ。「こんなひどい状況なら生まない方がいいかな」と弱気になった史佳さん。痛みも限界に達し「無理だ」と叫んだ。選手を激励するように誠さんが声を上げた。「大丈夫」「だめじゃねえ」。午後3時23分、虎ちゃんが無事生まれた。

翌日、ベガルタ仙台の手倉森誠監督が見舞いに来てくれた。退院後、コメやおむつをコーチらが届けてくれた。周囲の支援に感謝は尽きない。風邪もめったにひかず、ほとんど医者に掛からない虎ちゃん。ことし3月からは体操教室に通い運動能力は伸び盛りだ。

「あの日に生まれたことを思うと、命さえあればいい。優しい子になってほしい」と史佳さん。誠さんはJリーグ元年の1993年に仙台育英高から横浜フリューゲルスに入り、ベガルタ仙台などで活躍したFWだ。「サッカー、サッカー」と言う機会が増えてきた虎ちゃんに期待を抱く。「まずはベガルタのスクールかな」

以前の講演でも大谷徹奘さんが言われていたように、現在に生きる人は単なる今を生きているのではなく、過去から未来へと命を繫げる中今といって、先人から引き継いだものをないがしろにせず、子孫に伝えていく大切な役割を持っていると言います。

それだけに今回の震災でも、多くの方々が無念の死を遂げられただけに、生き残った人たちが亡くなられた方々の命を無駄にしない生き方をしなければいけないものと強く感じます。ですから今さえよければいいといった生き方は絶対できないものです。

上に記したように大変な思いをしてこの世に生まれてきた命は、本当に貴重で尊いものです。きっと先人の思いも兼ね備えた、優しい人間になるのではないでしょうか。

9日の月曜日は私用で休ませていただきますので、カキコミはお休みさせて下さい。

2013.12.05

謝罪の記者会見 No.2498

 食材偽装に始まり、金融機関の暴力団への融資、また保冷装置や保冷材での依頼物資にもかかわらず、使用しないで届ける宅配業者など、連日、謝罪の記者会見が相次いでいる昨今ですが、二人の喋りのプロに対してもお詫びの記者会見の評判がよくないとの記事が載っていました。

一人は名古屋国税局から8000万円の申告漏れを指摘された坂東英二さんです。税に無知だったと頭を下げた坂東さんでしたが、その指摘に対しては、植毛にかかった費用が経費で落ちると思ったが認められなかったという釈明でした。

また指摘されたのが昨年暮れでしたので1年近く経ってからの会見です。そして最後に「いま一度お仕事をさせて頂くチャンスを下さい」と締めて会場を去ったそうです。

そしてもう一人は次男が窃盗未遂の疑いで逮捕されたことで、番組キャスタ-を降板したみのもんたさんです。番組を降板した背景にはバッシングがあり、「やめなければ収まらない風潮に感じた。人品骨柄までたたかれるとは思っていなかった」と語っています。

また残って活動を続けているラジオ番組の中で、亡くなった島倉千代子さんの葬儀を、自分のカムバックにふさわしい舞台だと発言して、批判が相次いだと言われています。

この二人の会見に対して記事では次のように指摘しています。坂東さんの場合、謝罪より仕事の再開をアピ-ルしたい場だったように感じたといい、みのさんについては、社会人の息子の責任を親が取るのはナンセンスとしても、息子への愛情が感じられず、自分のことばかり話していたのが世論の反発を招いたのではないかと言っています。

私たちが考えても、植毛に8000万円もの経費がかかるというのもおかしなものです。やはり言い訳にしか聞こえません。また釈明がいかんせん遅すぎるわけで、時機を逸した謝罪とも言えるのではないでしょうか。

またみのさんについても、息子に足を引っ張られて気の毒には思いますが、息子をそこまで育てたのはやはり親であり、親の責任は小さなものではないはずです。まして今までの番組の中で、そうした類の問題に対しては鋭い舌鋒を奮っていたみのさんだけに、はね返りは小さくないものと思われます。

記事の最後に、「謝罪とは今後の要求を一切しない、希望を口にしないこと」であり、「復帰は声がかかったときに初めて言うことで、二人とも謝り方として失敗」とまとめていました。ということからも、二人ともその復帰はまだまだ先のように感じます。

とにかくお詫びで頭を下げることがいやに多く感ずる昨今です。昔からよく言われる「謝って済めば警察は要らない」という言葉を思い出したものです。

2013.12.04

引退後は指導者 No.2497

 サッカ-横浜マリノスの中村俊輔選手が引退後は指導者で恩返しをしたいと述べていました。先日の勝てば優勝という、対アルビレックス新潟戦を少し眺めていましたが、引退どころかまだまだ司令塔として十分な働きを見せていました。

35歳になるという中村選手、私が常々不思議に思っているのが、どうしてこの選手が日本代表に選ばれないのかということです。フリ-キックの巧さなど、天下一品のものを備え、おそらく右に出る者がいないのではないでしょうか。

でもサッカ-のことなどよく解らない私ですから、いろいろなそれを妨げることがあるのでしょう。選手間の折り合いについても、以前あまり本田選手との相性がよくないと、聞いたことがあるように思います。

なかなか連携が中心のサッカ-だけに、私たちの想像以上にコンビネ-ションなど考えたら難しい問題があるのではないでしょうか。その中村選手がセカンドキャリア(第二の人生)として、いろいろな勉強をしながら引退後は指導者を目指しているというのです。

横浜マリノスのジュニアユ-スに所属していた中学時代、中村選手は身長が思うように伸びず、人知れず悩んだ時期があったそうです。その姿を見たコ-チから「気にすることはない。今はしっかり技術を身につければいい」とアドバイスを受けました。

この言葉を聞き、心の重しが取れて一気に視界が開けたと言います。そのときのコ-チが現在の横浜マリノスの樋口監督なのです。このようにいろいろな指導者に助けられた自身の経験から、「あの監督に会えて良かった」と思ってもらえるような指導者になりたいと言っています。

選手の才能を引き出し、伸ばす指導者となって、今度は自分が恩返しする番だと言っているのです。そのために指導者としての第一歩はブラジルからとのことです。貧富の差が激しいブラジルではプロになって、のし上がろうとする気風が特段強く、今一度サッカ-への価値観を見つめ直したいということからです。

しかしながら文化の違いや言葉の壁もあり、強国のブラジルで指導者になるのは容易なことではありません。でもまず見ることから始めたいと、その決意は固いようです。現在でも時間があれば海外リ-グやJ2の試合まで、テレビで観るように心掛けているそうです。

そして「あの選手、もう2m後ろにいたら、あのゴ-ルはなかったのに」とか「この監督は勝ち点が欲しいから5バックにしているんだな」というように、監督目線や違ったポジションからの目線、また時には観客目線からいろいろな想像を膨らませて眺めているみたいです。

まさに指導者になる訓練とも言えるのです。本人も「もしかしたら、監督の方が向いているかも」と考えることもあるみたいです。近年、日本サッカ-はなぜか外人の監督に頼っています。それだけに中村俊輔選手のように、ゲ-ムを支配できる選手がその戦術眼を更に磨いていけば楽しみな指導者になるのではないでしょうか。期待したいものです。