会長の”三行日記”

2016.03.02

寄席二人会 No.2817

 先週末の27~28日は中小企業家同友会の県経営指針を創る会の卒業式でした。初日こそ一日中、会場である沼津のウェルサンピアに夜まで詰めましたが、翌日の日曜日は親戚の49日法要があるため休ませていただきました。

それにしてもいつものとおり、白熱した議論のやりとりには凄いものがあり、皆さんの経営に対しての真摯な取り組みに少なからぬ刺激を頂けるものです。さてその日曜日、法要が済んだ夕方、予めチケットを購入していた沼津寄席二人会という落語を聴きに家内と出掛けました。

人間国宝・桂米朝さんの息子である桂米團治さんと、笑点でお馴染みの林家たい平さんの二人会です。まず最初は二人による掛け合いのト-クショ-から始まり、次は前座の吉の丞さんによる『犬の目』という落語です。

古典落語の1つらしいのですが、両目を患った男が医者の元に駆けつけ、目玉をくり抜いて洗浄し、乾かしていたら犬に食われてしまったという噺(はなし)です。

そして仕方ないからその犬の目を代わりに元の目に戻すというものですが、今までよりずっとよく見えるようになったけど、1つだけ困ったことができたと言います。それは電柱を見ると小便がしたくなるという落ちがついていました。

往復6時間以上かけてこの沼津に来たが、演ずる時間がたった12分とぼやいていた吉の丞さんでしたが、短い時間でも結構楽しませてもらいました。そして昼の部では1時間20分ぐらいの大熱演をトリで務めたという桂米團治さんが、今度は先の出番での登場です。

本当だかどうだか分かりませんが、ご本人の真打ち口上で自分の名前を米團治ではなく、あの関西大御所4人衆の一人、春団治さんと間違ったところから展開する、面白おかしい失敗談から始まり、『稽古屋』というお囃子や踊りも交えた落語で楽しませてくれました。

これは音曲噺(おんぎょくばなし)という貴重な噺みたいですが、高座で実際に落語家が、義太夫、常磐津、端唄などを、下座の三味線付きで賑やかに演じながら進めていく形式のものです。そのやり方は今では絶滅したというくらいの貴重なものらしく、米團治さんにその素養があるからだと思えました。

そして最後はたい平さんの登場です。ちょうど笑点をやっている時間帯だったことから、ここに来ている人たちはみんな笑点を観ていない人たちなんだと笑わせてから始まりました。演目は『抜け雀』といって、無一文の絵師であるお客が、夫婦だけでやっている旅籠に泊まるところから始まります。

宿賃の代わりについたてに雀の絵を書くわけですが、あくる朝、1羽5両だと言って、戻ってくるまでの抵当だとして絵師は出て行きます。出て行った部屋を覗くと不思議なことに、その5羽の雀がついたてから抜け出て部屋の中を飛び回り、終いには元の絵の中に帰ります。

このことが評判となり旅籠が繁盛していくわけですが、しまいには絵師の親が現われこのままでは雀が死んでしまうと言って、止まり木と籠を書き足します。そしてまた数日後、この絵師が戻ってきてその絵を眺めると、俺は親不孝をしたと言って屏風の前でひれ伏すのです。

衝立を見ろ、俺は我が親をかごかきにしたという落ちでしめていました。さすがですね。米團治さんといい、たい平さんといい、その話芸には堪能させられるものがありました。やはり日本が守らなければいけない古典芸能です。少しやみつきになりそうです。