会長の”三行日記”

2016.07.05

素人だからこそできる No.2863

 素人だからこそできる発想を商売に生かしている事例を読ませて頂きました。その1つはル-ルを守らない客を叱り飛ばすお店です。このお店は大阪の繊維問屋街・船場にある下着専門店のファンデという会社で、ケンカ商法と呼ばれるユニ-クなやり方で業績を伸ばしています。

ケンカ商法とは、店舗の入り口に、「包装なし」「商品は乱さずに見ること」「返品・交換なし」などの「取引条件」を掲げ、このルールを徹底できないお客には退去してもらうというものです。

普通、お客様は神様と言って、多くのお店では腫れ物に触るような扱いをしているものですが、このお店ではル-ルを無視しようものなら、お客でも「買い物は、カバンを置いてからにして!うちにはルールがあるから!」と叱り飛ばされるのです。

叱り飛ばしているのは店の経営者である、津田綾子さんという方で、「船場のケンカ母ちゃん」として知られ、テレビなどのメディアにも採り上げられているほか、経営者向けの講演会でもひっぱりだこの名物経営者になっているそうです。

彼女は子育てがひと段落した頃、旦那さんがやっていたこのお店を手伝うようになったのですが、それまで商売は全くの未経験だったそうです。このように他人を叱り飛ばすようになったのも、主人の言うとおりにした結果なのです。

何もわからない素人だから、とにかく主人のいうとおりにしようと、腹がくくれました。主人があの客を叱れといえば、それを素直に聞いて“ちゃんと畳んで!でけへんのやったら出てって”と声を張り上げていました」と語っています。

素人だからこそ、とにかく言われたことを忠実に徹底して行い、そうすることでお店の経営スタイルが定着し、お客の間でも「あの店ではル-ルを守らなければならない」という意識が自然に身についていったということです。

また素人ならではの発想で、プロでも難しいとされたものを可能にした人もいます。鳥取県米子市の弁当・押し寿し製造販売業、『米吾』の内田雄一朗社長がその人です。この会社の看板商品の『吾左衛門寿し』は、米子を代表する名物として知られていました。

ところが長期保存がきかず生産量が限られていたことから、かつては地元販売に限られていました。また大量注文があったときは社員が総出で深夜から製造しなければならず、労働環境としても劣悪の状態でした。

この問題を解決するため、社長は冷・解凍技術の導入を決めたのですが、専門メ-カ-からは寿しや弁当のように異なる食材を一緒に解凍する技術は難しいと断わられてしまったのです。

ならば自前で開発しようと社長は決心し、4年間、試行錯誤を繰り返した上、とうとう、弁当や寿しをむらなく解凍できる技術を開発、特許も取得したのです。これも英文科出身で全くの畑違いの素人だからこそできたと言われているのです。

なまじ知識があればそんなことはとても無理と諦めてしまうものですが、素人だからこそ、できないはずはないと考えて打ち込めたのです。こうして労働環境も大きく改善され、品質も安定したことに加え、うま味も増すことになったことにより出荷量も拡大し、販路も大幅に広がっていったのです。

まさに素人だからこそ、その強みを生かせたのです。よく同じ業界にいては常識にとらわれ、なかなか斬新な発想が生まれないと言われています。従っていろいろな人の意見やアイディアにも、真摯に耳を傾けなければいけないわけです。そういった意味では専門外の人こそ大きなヒントを持っていると言えるかもしれません。

明日6日から2日間、私用でお休みを頂くため、カキコミはお休みさせて下さい。

2016.07.04

世界772位 No.2862

 梅雨がもう終わったのかと思わせられる暑い週末の休日でした。その30度は超えると思われる炎天下の富士川河川敷で、ソフトボ-ルの試合を2試合もやってきました。いい歳をしてと言われそうですが、シニア年代みな元気がよいものです。

さてEU離脱で揺れているイギリスですが、もう一方ではウィンブルドンのテニスが開催されています。ここで世界ランク772位の選手が1回戦を勝ち上がったことで、大きな反響を呼んでいます。

この選手はマ-カス・ウィリスという人で、ロンドン中心部にあるテニス・クラブで子供達を中心にテニスを教えており、試合のあった月曜日の27日も本来なら5歳から10歳の子供へテニスを教えているはずでした。

そんな彼が歴史あるグランドスラム本戦1回戦で、世界ランク54位のR・ベランキス(リトアニア)を6-3, 6-4, 6-4のストレートで下し、2回戦進出を決めたのです。

両親と共に暮らしているウィリスは、1時間のテニスレッスンで40ドルを稼いでいるわけですが、これまでグランドスラムどころか、ツアーレベルの本戦での試合経験もなかったと言われています。

しかしジュニア時代は違っていて、2007・2008年のウィンブルドン・ジュニアで3回戦進出するなど、将来を期待された選手だったそうです。でも度重なる怪我やモチベーションの欠落などがその後のテニス人生の妨げとなっていたのです。

そんな人生の負け組になりかけていた彼の背中を押したのが、新しくできたガ-ルフレンドでした。彼女にテニスを続けるようにと言われたのが、まさにプロテニス選手としての人生を諦めようとしていて、フィラデルフィアへ移ってテニスを教えようと考えていたときだったのです。

こうしてテニスを続けたお陰で、今大会の予選へのワイルドカード獲得を争うプレーオフに招待され、そのプレーオフで3試合を勝ち抜き、ウィンブルドンの予選出場枠を獲得し、予選でも3試合で勝利を飾り、本戦への切符を手にしたのです。

ですからここまでにはそうした長い道のりがあったわけで、1回戦が行われた会場には多くのファンや友人、家族が押し掛け、大声援をバックに他のどのコートよりも盛り上がっていたわけです。

この1回戦を勝ったことにより、予想される獲得賞金は少なくとも5万ポンド(約650万円)と思われ、今年獲得した賞金総額の、シングルスとダブルス含めても350ドル(約3万5000円)だった彼にとっては、かなりの金額でサプライズとなったわけです。

そして迎えた2回戦の対戦相手は、最多優勝タイ記録となる7度の優勝を誇る第3シードのR・フェデラーでしたから、残念ながら敗れ去ってしまいましたが、センタ-コ-トに詰めかけた大観衆からは惜しみない拍手が送られたと言います。

ある意味、アメリカンドリ-ムみたいなものですが、やはり人間死ぬまで諦めてはいけないということでしょう。応援に駆け付けた、このコ-チに教わっている子どもたちにとっても、憧れのフェデラ-と対戦している我が先生をきっと逞しく誇りに思えたのではないでしょうか。

2016.06.30

人を生かす経営 No.2861

 同友会の仲間からこんな素晴らしい会社があることを教えて頂きました。まさに同友会が常日頃言っている、人を生かす経営を実践している会社です。

人を生かす経営」とは、経営者自らの経営姿勢を確立し、経営指針を社内外に明示して社員教育を進め、若者の計画的採用を行い、障がい者の力を生かす雇用を進めることと定義されています。

またそれだけに限らず、業界の常識を破った素晴らしい取り組みをされている内容を、日経ビジネスで紹介しています。三井物産連結対象のソフト開発・販売会社でSCSKという会社です。

雑誌巻頭で同社取締役相談役の中井戸信英さんが語っている談話は次のような内容です。情報システム会社と言えば残業がつきもので、システムエンジニアは何日も徹夜しているように思えますが、この悪しき習慣を改めているのがこの会社です。

社長になって健康経営を目標に掲げ、残業を徹底的に減らしているのです。また残業代がなくなると生活が成り立たないのであれば、その分を会社が支払います。そして有給休暇もしっかりと取ってもらっているのです。

ある社員から奥様の体調がすぐれず、その世話と仕事との両立が難しいという相談を受けると、仕事を他の社員でカバ-する体制を整えろと指示を出し、カバ-する社員の残業が増えることのないよう配慮しています。

こうした取り組みの、家族を含めて健康第一ということは誰しも思うのでしょうが、ほとんどは掛け声だけで実際にやっているところは少ないままです。残業もせず、有給休暇をフルに取得しても業績を上げれるかどうか訝(いぶか)るからです。

でも中井戸氏は次のように語っています。「考えの中心に会社があるのはおかしいですよ。まず、一人ひとりが潤いのある人生を送るというのが大前提です。そのための必要コストは会社が払う。充実した生活の妨げになっている制度や慣習があれば取り除く。

そうすれば人は効率的に働くようになり、会社も潤うはずだ」。また「残業をせず、定時退社して家族と夕飯を一緒に食べてどこが悪いんですか。まとまって休暇が取得できる制度を会社が用意しているのに、それを利用することは間違ったことなのでしょうか」と投げ掛けています。

有給などできれば使って欲しくないとか、忙しいときは残業が日常茶飯事の弊社にとっては耳の痛い話です。とても比べようのないほど、人を生かす経営を実践しているこの会社の足元には及ばないものですが、このように実践し成果を挙げている企業があるだけに、目指すべき指標にしなければいけません。

やはり社員とその家族を最優先に大切にし、守っていかなければいけないのが経営者の責務なのですね。

明日7/1は早朝から埼玉の浦和と川口に、お引合いを頂いている仕事の現場調査に出掛けますので、カキコミは休ませていただきます。