会長の”三行日記”
2013.04.15
愛情のお直し No.2378
愛情のお直しという見出しに、何だろうと読んでいったらワイシャツのリフォ-ムの話でした。襟や袖口がほころんできたシャツでも、長年連れ添うと結構、愛着があるものです。そんな捨てられそうなワイシャツを、何とか救えないかという発想で頑張っている仕立屋さんがいます。
この人は茨城県坂東市にある「梅屋ドレス」の店主である、倉持康男さんです。仕立屋さんの3代目なのですが、7年前にこのシャツの襟とカフス専門のリフォ-ムを始めたら、全国から顧客がつき、気に入っているものを大事に着たいという人たちの支持を受けているそうです。
自宅敷地の一角にある工場には、襟とカフスを取り除いた数十枚のシャツが整然と並んでいます。そこには海外有名ブランドやデパ-トなどで仕立てたワイシャツが多いが、中にはユニクロのシャツも混じっています。
顧客は北海道から沖縄までと幅広く、ほとんどがホ-ムペ-ジを見て郵送してくる人たちです。その仕立て直す形や生地をメ-ルでやりとりし、柄などは同じ生地がなかなかないので、襟とカフスが白い「クレリックシャツ」というものに仕立て直すそうです。
そして出来上がったら宅配便で返送し、料金を振り込んでもらうという仕組みです。元々このお店は祖父の代に紳士物の仕立屋として創業し、先代の父までは高度経済成長時代に併せて順調にお店を進めてきました。ところが3代目の康男さんの代になると、取引先の経営が悪化し、注文が激減するようになってしまったのです。
多くの激変同様、ここにも経済環境の大きな変化があったのです。それでも倉持さんはめげず、ふと見たテレビでス-ツやシャツを作るのに多くの石油が使われていることを知り、これが捨てられたらまた余分のエネルギ-がかかることに着目しました。
そして前々から生地が柔らかくなって着やすくなる頃に、襟やカフスが傷んでくることにも気づいていて、そのリフォ-ムさえすればきっと需要はあるものと考え出したのです。時はちょうど小泉政権時代、小泉さんはじめ政治家のクレリックシャツ姿が出回っていた頃です。これからの時代に受け入れられていくかもと感じていたのです。
仕立て直すのには月100着程度しかできません。このため今年は一時受付けを止めるほど、注文が入っているとのことです。そんな会うことのない顧客の境遇に思いをはせることもあるそうです。そして「愛着あるものに囲まれたいという人が多いのか。高級輸入シャツだろうと量販店のシャツであろうと、直すときの気持ちは同じです」と倉持さんは語ります。
その倉持さんの工場の中には、「物を大切にすることの大切さを気づかせていただき、ありがとうございました」など、お客さんから届いた手紙やはがきを大事にしまってあるそうです。ここにもしっかりと自分の立ち位置を見つけ、困難な環境にもめげず立派に差別化を図っている人がいます。
今まで培った技術をただ眠らせておくのでなく、新たな分野を開拓し、活かしているのです。やはり動かなければ何も変わらないものです。そして顧客の喜ぶ顔を描きながら仕事を進めることができます。本当に素晴らしい取り組みですね。