会長の”三行日記”

2013.06.14

櫻井よし子氏講演会より No.2411

  昨日は久しぶりに講演会に出かけてきました。商工会議所が主催する櫻井よしこ氏の講演会です。聞くとこの日は同会議所の議員総会だったとのことで、いつもはその会が終わると定例の懇親会へと流れるらしいのですが、時節柄、自粛したのか、一般向けの記念講演会を開催してくれたのです。

そんなわけで私も参加させていただいたのですが、櫻井よしこさんと言ったらご存知の通り、歯切れのよさで定評のある方です。そしていつも対中国には特に厳しい姿勢を貫いていることでも知られています。

そんなことから、尖閣問題で揺れる日中間だけに、「この国の行方~日本の進路と誇りある国づくり}と題した講演は大いに興味をそそられたわけです。まず先ごろ行われた、オバマと習近平の両氏による米中首脳会談から語り始めました。

8時間もの時間をかけた両者の話し合いでしたが、結局、結論らしきものは何一つなかったと言います。現在、アメリカは国民の1/5に当たる6000万人の人が、病気になっても医者にも診てもらえないのが実情です。

日本のように国民ひとり一人に対する保険制度がないからです。このため来年から施行することになった、国民がこの保険に頼る制度には莫大な費用が掛かり、この先10年間で120兆円もの軍事費を削らなければいけないと言われています。

そんなわけで財政が逼迫してきていることから、むやみやたらに軍事費を掛けるわけにはいかないのが現状のようです。従って北朝鮮問題にしても自国は介入せずその解決を中国に任せるような方式をとったり、シリア問題でもアサド大統領が10万人も国民を殺しているというのに、未だに反政府軍に手を差し伸べようとはしていません。

それはアメリカ国民の間からも、自国民をないがしろにして、他国の防衛や軍事援助もないものだという声が出始めているからです。一方、中国の習近平のめざすものは、偉大なる中華民族の復興という、中国の夢を叶えることにあるみたいです。

従って失ったものを取り返すと称して、尖閣列島どころか日本に対しては沖縄まで、そしてご存知の通り、南シナ海まで足を伸ばしたり、挙句にはインドまで勢力を拡大しようとしているとのことです。全く説得力が何もないものなのですが、軍事力を最優先し平時に活用すべきと声を大にしているみたいです。

こうした内外情勢で日本がめざすことは、ご本人が持論としている、まず憲法を改正して反撃のできる自衛隊にしなければと熱く語っていました。ここが私の考えるところと違っているわけですが、会場から拍手が沸いていたとおり、そうした望む声も少なくないのかなと思ったほどです。

この国を守るということには何も異存がないものですが、だからと言って、目には目をといったやり方が果たして有効なのでしょうか。それこそ、大切にしなければいけない次世代の人間を再度、悲惨な戦争に巻き込むことになるのではないでしょうか。それにしても90分間、よどみなく語った聡明さには感心させられたものです。

2013.06.13

歴史人物に学ぶ1・伊藤博文 No.2410

 やはりお札にまでなった人ですから偉大には違いないでしょうが、いったいどういう功績があった人なのか、よく把握していないのは私に限らず、少なくないのではないでしょうか。そんなことから伊藤博文という人物について、少し調べてみました。

人間はその一生のうちで、のるかそるかの大きな判断を下さなければいけないときがあるはずです。明治の元勲と記され、初代総理大臣にもなった伊藤博文にも、そんな大博打を打たなければいけない時があったと言われています。以下、少しまとめた記述です。

伊藤は、長州下級武士の出身。吉田松陰の松下村塾に学び、高杉晋作、井上聞多らと倒幕運動に加わった。22歳のときには、長州藩の代表として秘密裏にイギリスに渡航。しかし四ケ国連合艦隊による長州藩攻撃が近いことを知ると、井上聞多とともに急ぎ帰国し戦争回避に奔走する。

当時長州藩は外国人を排斥しようとする攘夷派の総本山のような立場にあり、諸国との戦争を回避に奔走した伊藤は、井上、高杉晋作と共に藩内外から外国列強に与したと批判をされ、命をつけねらわれることになる。

四ケ国戦争の後、長州藩は正義派と呼ばれる攘夷推進政権が倒れ、俗論派と呼ばれる幕府恭順政権が発足する。時おりしも幕府が第一次長州征伐の陣触れを出し、幕府軍以下26藩が長州に攻め入ることとなる。恭順政権は、攘夷を推進した重臣を処刑するなど徹底して幕威の前にひれ伏す体制をとる。

当時長州藩には、諸隊と呼ばれる軍事部隊があった。高杉晋作が作り上げた奇兵隊、諸藩の脱藩浪士が集った遊撃隊、力士が集った力士隊など、身分制度にとらわれない武士階級と農民や町民が混合された部隊だ。武士が主体となった正兵と区別され、かつ長州藩内にて一級の武力を備えていた。

しかし恭順政権の前に動きをとることができず、諸隊は推移をただ見守るしかなかったが、暗殺の危険から藩外に逃亡していた高杉晋作が帰藩。奇兵隊を軸にクーデターを起こし、一気に情勢を挽回しようとする。しかし諸隊合わせても人数は800名足らず。恭順派に与する正兵は2000名強。どうしたって勝ち目がなく、諸隊は動こうとしない。業を煮やした晋作は、わずかな人数での挙兵を決意する。

そのとき伊藤博文は、どうしたか。どう考えても高杉晋作の挙兵は暴挙であり、失敗すると伊藤自身は考えていた。しかし、いままでの行きがかり上、晋作に命をくれてやろうと決意したのだ。晋作は、唯一の同志となった伊藤に、10名でもいいから同志を集めることを命じ、下関に向かわせた。

もともと武士階級の出ではなかった伊藤は、まともに馬に乗れない。必死にたてがみにしがみつきながら、「俺はもう死んでいるのだ、死んでいるのだ」と自らに言い聞かせながらただ一騎夜道を下関に向かったという。

結果わずか80名で蜂起した高杉晋作一派が、奇兵隊をも動かし、ついには時の政権軍との決戦に至り、旧態依然とした銃器、戦法での武士(政権軍)たちは、洋式銃をもった奇兵隊たちの敵にはならず、激闘のうえ、ついにクーデターは成功した。

じつはそれまでの伊藤は、身分が低いゆえ、その立場はちょっと気のきく使い走り的な扱いであり、晋作の手駒に過ぎなかった。しかしそれ以降、藩において重き役につくようになる。維新後明治政府内においてはついには参議にまで登りつめ、明治憲法の制定の中心的な存在となり、やがて内閣総理大臣(しかも4度も!)を拝命するまでになるのだ。

「俺は死んでいる」と自分に言い聞かせ、クーデターに参加したのが新たな人生を切り開くことになったのです。いちかばちかの局面で自分の人生を賭けるほどの性根は大いに評価されます。このように難局に直面したときの人間の振る舞いにより、その後の人生を大きく変えることができるわけです。

2013.06.12

統一球の混乱 No.2409

 もうシ-ズンが始まって2ヶ月以上経っているというこの時期に、統一球が昨年と違って作られ、使用されているという事実が判明しました。なぜこの時期にということなのですが、プロ野球界は無用の混乱を招いてしまっています。

そもそもその背景は、大リ-グでの使用球や今年行われたWBCでの使用球などとの違いから、日本プロ野球も国際化を図った統一球にしなければというのが出発点でした。

このため、一昨年の2011年度から、それまでの各球団ごとに選択していた公式球を、全てミズノ製の統一球を使用することに改めたのです。この結果、ボ-ルの反発係数をそれまでより低く抑えたため、以前よりボ-ルが飛ばず、ホ-ムランも出にくくなってしまったのです。

いわゆる飛ばないボ-ルというものです。ここまでの日本野球機構(NPB)がとった処置は、結果はともかく、その趣旨から決して責められるようなことではないと思います。大リ-グに移籍する選手も増えてきたり、日本のボ-ルがあちらに比べて飛び過ぎるのでは何かと不都合が生ずるからです。

でも導入により極端な打率の低下やホ-ムランの減少を招き、投高打低となった野球が顕著となりました。これが2年も続いたからでしょう。野球そのものが面白くなくなってきているという声が一部にも聞かれ、日本野球機構(NPB)がとった処置とは、今シ-ズンを前にして製造会社のミズノに対して、反発係数の調整を指示していたのです。

それも内緒でこっそりとやっていたのです。NPBに言わせると、反発係数の検査で下限を下回るボールが頻出し、反発係数の下限を守るためといった答弁をしているようですが、どうもそれも言い逃れのように聞こえてしまいます。

今シ-ズン、ここ2年間よりぐっとホ-ムランの数も増え、選手ばかりでなくフアンの間からも、飛ぶボ-ルに変わったのでは?という声があちこちに聞かれるようになりました。こうした声が高まるにつれて、NPBもこの時点で発表しないわけにはいかなくなったのでしょう。

問題は今シ-ズンを前に、なぜNPBが独断でそういった処置を取ったかです。導入の結果がどうあれ、NPBだけで結論を出せる問題ではないはずです。そもそもの出発点の趣旨や、野球をもっと面白くさせる事情があるにしても、そこには当然、選手を含めた球団関係者との話し合いがあってしかるべきです。

NPBはメ-カ-のミズノにまで、そうした指示があったことは内密にという通達を出していたと言います。そうした隠蔽体質そのものが大きな問題であると考えます。加藤良三コミッショナ-は自分は何も知らされていなかったと述べています。

でも、もしそれが本当であっても、統一球に自分のサインまで刻印されていることだけに、知らなかったでは済まされないのではないでしょうか。そうした隠蔽体質の組織の長ゆえに、大きな責任を感ずるものです。とにかく選手やフアンあってのプロ野球であることをよく自覚してもらいたいものです。