会長の”三行日記”

2014.11.11

壮絶な演技 No.2643

 壮絶な演技と言ったら、中国で行われたフィギュア中国杯での羽生選手でしょう。運悪くフリ-演技直前の練習で中国選手と激突し、その場に倒れ込んだから、その後の演技ができるかどうか心配されたほどです。

でも控室に一旦戻って氷上に現われたときには、頭に包帯を巻き顎に絆創膏を貼っての出で立ちで演技を続けたのです。演技の後で分かったことですが、顎に7針、右耳上に3針縫い、しかも右足首まで捻挫しているケガだったのです。

これでは満足な演技などできるわけではありません。2位には入ったものの、5度もジャンプで転倒するほどの無残な演技だったのです。でも高得点が出たのはそういう状況にもかかわらず、4回転ジャンプにしっかりと挑戦し続けたその姿勢にあったのではないでしょうか。

そうした壮絶とも言える彼の勇気と心意気に称賛の声が増す一方で、一部にはこれでは選手生命を縮めてしまうといった懸念する声が挙がっています。

彼のコ-チでさえ「今はヒ-ロ-になる必要はない」と言って競技中止を求めたということですが、本人がどうしても出ると言って応じなかったと言います。まさにプロ根性そのものです。

あの優しい顔の裏にそこまでの根性があるとはなかなか結びつかないのですが、私たちの知らないところで結構、その若さでは背負い切れない試練に耐えてきたみたいです。

東日本大震災もその1つですが、膝や足首の故障などに加え、ぜんそくという持病も持っているみたいです。それゆえ体力測定では肺活量がスポーツ選手の平均を下回っているほどで、同じ持病を持つスケ-トの清水宏保さんが人一倍の練習でそのハンディを克服したと聞き、ぜんそくを理由にしないと自分に誓ったそうです。

それにしても負傷後の演技中、転んでも転んでも起き上がり、必死に演技を続ける羽生選手の姿には多くの人が胸を打たれたのではないでしょうか。演技を観ていなかった私でも、ニュ-スを見ただけで胸が熱くなるほどでした。

また急遽の帰国後でも空港で出迎えた大勢のファンに対し、丁寧に頭を下げ続けるその姿にも好感を持ったほどです。日本男子フィギュア界に現われた、久しぶりの救世主とも言える存在ではないでしょうか。

それだけに大事をとってゆっくりと体を休め、しばらくは無理をしないことです。でも今回のこの1件でまた羽生ファンは増えたのではないでしょうか。若き20歳に称賛の拍手を送り、今後益々の躍進を願いたいものです。