会長の”三行日記”
2014.10.21
素敵な町おこし No.2635
人口が高々2千数百人の町でもこんな素敵な町おこしができるのですね。本土から沖合60㎞の位置にある島根県の隠岐諸島の中の1つで、周囲がほぼ90kmぐらいの1島1町である海士町(あまちょう)の話です。
2007年に北海道夕張市が財政再建団体へ移行するという、いわゆる財政破綻のニュースが話題を呼びましたが、この町も他人事ではないような実情だったようで、2002年に当選し町長となった山内さんは少しも驚かなかったと言います。
この海士町は平成の大合併の嵐が吹き荒れる中で、離島が合併してもメリットがないと判断し、単独の道を選んだそうです。でも地方交付税が削減され、国からの補助金も減少すると公共事業で雇用の確保もできず、「2008年には海士町は財政再建団体へ転落する」と言われていたほどです。
その窮地を救う手だてをしたのが、誰でもないこの町長である山内道雄さんだったのです。徹底した行財政改革を断行するには、自ら身を削らなければならないと考え、当選後にまず自分の給与カットに踏み切ったのです。
すると、職員たちも「自分たちの給与もカットしてほしい」と申し出てくれ、町議、教育委員も続いたのです。2005年には町長の給与は50%、助役、町議、教育委員は40%、職員は16%から30%とそれぞれカットし、2億円の人件費削減に成功したと言います。
これで海士町は「日本一給料の安い自治体」となったわけですが、小さく守りに入ったわけではなく、生き残りをかけ、ここから攻めに転じていくのです。何かこれだけでも感動的な話で胸が熱くなりそうですが、町長を中心として攻めに転じていった話を少しずつ紹介したいと思います。
元々この島は魚介類が豊富に獲れ、サザエなどは島民が飽きるほど食していたわけですが、離島というハンデと市場がないことから、漁師が捕ったものを漁協に渡して、漁協が境港(鳥取県)の魚市に出していたのです。
そして魚などは今日捕ってきたものでも、あくる日の船で行けば鮮度が落ちて買い叩かれてしまい、漁師が儲かる仕組みができていなかったのです。
そこで海士町では第三セクター「ふるさと海士」というものを立ち上げ、細胞組織を壊すことなく冷凍、鮮度を保ったまま魚介を出荷できる「CASシステム」という最新技術を導入したのです。
この町で一貫生産に成功したブランド「いわがき・春香」や、特産の「しろイカ」などを直接、都市の消費者に届けることがねらいだったのです。システムそのものは1億円もしなかったのですが、建物なども含めると5億円掛かってしまったのです。
県議会などでは採算がとれず黒字にはならないと揉めたのですが、背水の陣で挑んだ結果、産地直送の新鮮な魚介は人気となり、首都圏の外食チェーンをはじめ、百貨店やスーパー、米国や中国など海外にも販路を広げていったのです。
この他、これに留まらず次々と新しい施策を打ち出していくのですが、また次回紹介したいと思います。とにかくこの山内町長みたいに、身を削ってもこの町を良くしたいという、気骨のある人を我が街でも欲しいですね。