会長の”三行日記”
2014.08.06
原爆記念日 No.2606
STAP細胞の小保方晴子さんの研究指導員でもある、理研の笹井芳樹副センター長が自殺をしてしまいました。これで一層、その真相解明が困難になるばかりでなく、日本の再生医療研究における有数の科学者の一人であるだけに誠に残念な話です。
さて今日は69回目の広島の原爆記念日です。広島と長崎に原爆が落とされてから今年で69年の歳月が流れたわけですが、高齢の被爆者は次々と亡くなり、この3月には被爆者健康手帳を持つ人の数は20万人を割り込んだと言われています。
それだけ原爆を実際に知る人が少なくなっているということですが、一度に多数の人を殺傷して街を破壊するほか、長期にわたって健康や環境に悪影響をもたらすといった「人道的に取り返しのつかない惨事」となった、この原爆を決して忘れることなく、二度と繰り返さないためにも後世に引き継いでいかなければいけないものです。
そうした役目を担っている一人に女優の吉永小百合さんがいます。来年70歳にもなろうとしている吉永さんは、相変わらず綺麗でとても年相応には見えない若々しい方ですが、原爆や原発廃止に取り組むその姿勢には敬意を表するものです。
吉永さんは胎内被爆した主人公を演じた「夢千代日記」というドラマや映画をきっかけに、以後、原爆詩の朗読を続けてきています。それは何よりも「日本人だけはずっと、未来永劫、核に対してアレルギーを持ってほしい」という祈りに似た強い願いからです。
また原発の再稼働や輸出の動きがあることに関しては、「さよなら原発と私は声を出していきたい。みんなの命を守るために、今、せっかく原発が止まっているのだから、今やめましょうと」。そして「まだ毎日、汚染水など現場で苦しい思いの中で作業していらっしゃる方がたくさんいる。そういう中で、外国に原発を売るというのは、とても考えられないことです」と述べています。
そして「私は俳優だから、詩を読むことが一番伝わる」と言って、ひたむきにその活動を続けています。詩の朗読で自ら選んだ一つが、「にんげんをかえせ」で知られる詩人・峠三吉の「原爆詩集 序」です。これには峠さんのすべての思いが詰まっていて、まったく原爆のことを知らない方でも、『えっ』という思いになってくれると言っています。
それよりもっと強い表現の詩がたくさんあるのですが、最初からそんなものは聞きたくないという、拒否反応を怖れているからです。やさしく分かりやすく読んで、こういった詩があることに気づいてもらい、次のステップに進んでもらいたいという手法です。
そして「自分の力は小さくても、朗読を聴いた学校の先生たちが子どもたちに教えてくださり、その時の生徒が今、先生になって、ご自身が子どもたちに教えてくださっていることが大事で、受け止めてくれた方が次にまた伝えることが被爆者の願いでもあると思う」と語っています。
また渋谷の女子学生にインタビューして、「1945年8月6日に何が起きたか知ってる」って聞いたら、「えー、知らない、地震?」っていう答えが返ってきたが、そんな日本であってはいけない、みんながあのときの痛みを分かろうとしないといけないと指摘しています。
それから原発事故についても、「日本の原発の事故を見て、ドイツでは原発をやめましょうと決めているわけです。でも、日本はそうじゃない。やめたいと思っている方はたくさんいると思うんですけど、声を出す人は少ないんですよね。だからやっぱり、自分が思ったことは声に出したい、意思を伝えたいと考えました。
仕事をしていくうえでネックになることはこれからあると思いますけど、人間の命のほうが電力よりも大事じゃないか、という根本だけは忘れたくありません」と、ある種の覚悟が感じられるほど、真正面から向き合ってこの問題を捉えています。
さすがは吉永小百合さん、物心ついた頃から憧れた人だけのことはあります。とにかく広島や長崎に行く機会があったら、是非、資料館に出掛け、その悲惨さから一人でも多くの人が何かを感じ取ってほしいものです。
吉永さんも被爆60年の年、仕事で行ったパリの市庁舎で開催していた、広島展の出口で鶴を折るコーナーがあり、フランスの子どもが不器用だけど一生懸命折っていた姿が目に焼き付いているそうです。こうした「私たち、忘れないでいようね」という思いが世界中で核兵器の廃絶につながってほしいと強く願っているものです。