会長の”三行日記”
2012.02.07
おばあちゃんの薬 No.2151
「おばあちゃんの薬」という、新聞の投稿文に目を惹かれました。被災地・仙台の方からのものです。
東京の大学に通うひとり息子は、幼い頃ぜんそく気味で、軽いとはいえ夜中に発作を起こすことがあった。
心配した実家の母は、ぜんそくに効くからと、自分で煎じた薬を季節の変わり目にせっせと作っては、孫のために送ってくれた。
その煎じ薬は、ホオズキと白ナンテンを乾燥させ、ザラメを入れて煮詰めたもので、かなり甘苦い。それでもなぜか、息子はそれを「おばあちゃんくすり」と呼んで、喜んで飲んでいた。
「これを飲むと苦しくならないからね」という母の言葉とともに、おまじないの薬となった。大きくなって体力もつき、ぜんそくが改善されても、相変わらず母は煎じては送り続けてくれた。
大学受験で東京に行く時も、息子は小瓶に詰めて持って行った。苦しい就職活動の時にも、飲んでいたという。
でもその薬は、この冬に向かう時、息子の元に届けられることはなかった。煎じ続けてくれた母は、あの震災による津波で、突然命を奪われてしまった。
お母さん、あなたの孫は、あなたの力を借りながら、たくましい青年になりましたよ。おかげさまでこの春、社会人になります。
被災地にはこのような方が少なくないものと思われます。もっともっとその思いを伝えたかったのではないでしょうか。何か切ないものを感じてしまうものです。
でもこの方のように、おばあちゃんはしっかりと心の中に生き続けています。こうしたかけがえのない先人の温かな気持ちを大切にしていかなければと、改めて教えられます。
それにしても、極寒の仮設住宅などに住む被災者の苦労は、私たちの想像が届かないくらい大変なものがあるようです。あの震災から、かれこれ1年が経とうとしている今日、季節だけではない、暖かな春の訪れが待ち望まれるものです。