会長の”三行日記”
2011.11.10
隠ぺい工作 No.2106
昨日は静岡大学に出向き、人文学部の学生さんを相手に90分の講義をしてまいりました。これは中小企業家同友会と静岡大学の連携講座で、大学の教授とは全く違った、中小企業の経営者としての立場から、昨年に引き続き講師を務めたものです。
初めて行った昨年よりは、ずっと落ち着いてその役を務めることができましたが、いくら学生さんたち聴講者が変わっているからといえ、2年続けて同じような話をすることには少し抵抗があるものです。そしてどうしても聴いている方々の反応が気になりますが、私にとっても貴重な経験だと思っています。
さて過日触れたオリンパス問題ですが、ようやくその裏側に潜む問題が明らかにされてきました。解任された前社長のマイケル・ウッドフォード氏の指摘による、多額の企業買収とその手数料の根拠が不明となっている問題です。
調べによると、資源リサイクル会社など国内3社の企業買収には、その資産価値に見合わない高額な買収価格が発表されていましたが、資金の一部は同社が1990年代から抱えていた有価証券投資などの失敗による損失穴埋めに流用されたとのことです。
また当時同社の監査法人を務めていた、あずさ監査法人から不自然な買収問題の指摘をされていたにも関わらず、社内的に問題視せず、同法人は解約されて別の法人に代えられたという経緯も発覚しました。
明らかに当時の執行部役員による隠ぺい工作です。それは損失隠しに使われた手法で、保有株や不動産が値下がりした企業が損失表面化を避けるため、決算期が異なる関連企業に、含み損のある有価証券などを一時的に売却する、「飛ばし」というものらしいのです。
ですからオリンパスはバブル当時、財テクに失敗し、90年代に千数百億円の含み損を抱えていたとのことです。それを長いこと引きずってきて、長いものには巻かれろ体質で内部では問題化されなかったことを、新進気鋭の外様であるマイケル・ウッドフォード社長の出現で表面化されたのでしょう。
こうなるとオリンパスの1社の問題が、さも日本的企業全般に共通しているような誤解さえ与えかねません。オリンパスはこれにより決算の公表が期日までにできないことから監査銘柄株式とされ、来月14日までに決算発表ができないと上場廃止となります。
まさに光学機器の分野では、世界を席巻した繁栄から没落の一途をたどるものです。オリンパスの前身は高千穂製作所と言います。神々が宿る高千穂の峰から、世界の高天原をめざそうと、その名「オリンパス」はギリシャ神話の聖地から名づけられたとのことです。この有り様ではその名が寂しく泣いているものです。