会長の”三行日記”
2017.06.02
宮里藍ちゃんの引退 No.2935
女子ゴルフの宮里藍ちゃんが今季限りで引退することになりました。まさに日本女子プロゴルフ会の第1人者で、現在の女子プロ人気を高めた一番の功労者でもあります。またそれに相応しい成績で、米ツア-9勝、日本ツア-15勝という輝かしい足跡を残しています。
そしてまだ31歳と年も若く、引退するにはもったいないという声が多いのですが、会見では維持していくだけのモチベ-ションが難しくなったという理由を挙げていました。
確かに近年、若手の成長が著しく、技術的にも155cmの小柄な藍ちゃんでは飛距離という点では、なかなか難しいところもあるのでしょうが、自身が一番の身上としていた小技、特にパタ-の巧さがあるはずです。
でも聞くところによると、このパタ-もあるとき輸送の途中でシャフトに狂いが生じてから、なかなか以前のようにはいかず悩んでいたみたいです。このへんが我々素人とは違う、精度といった点で大きな差があるのでしょう。
それにしても、この宮里藍ちゃんという選手の、きちんとした受け答えや礼儀正しさはいつ見ても心地良いものです。こんな話があるそうです。彼女が19歳で米ツア-に参戦する前の年のことです。
アメリカ進出を目指して英語の勉強をしていたとのことですが、欧州ツア-のある時、海外メディアの質問に対し必死に英語で応えていました。その会見には通訳がついていたにも関わらず、「すいません。いけるところまで自分でやってみたいんです」と言って自分で応えていたのです。
英語そのものはまだ流暢ではなかったにしろ、言葉につまったときでも通訳に「どう言ったらいいですか」と聞きながら、堂々と英語で応えていたそうです。19歳でしかも大勢の海外記者に囲まれての取材では、なかなかこうはいかないものです。
こうした人間としての備えている非凡さも、父である優さんの教えらしいのです。「勉強一番、ゴルフ二番。技術的に上り詰めたプロの世界では、最終的には“人格勝負”になる。人間的な幅を持ったスポーツマンになること」がその教えです。
プロゴルファ-である前に一人の人間として恥ずかしくないことがその信条なのでしょう。実際に優さんはゴルフの技術的なことでは怒ることはしなかったけど、マナーや躾には厳しかったそうです。
その小学生時代、ジュニア大会に出場した宮里選手はプレイが終わってから、帽子を脱いでスタッフ、メンバー、会う人全てに「ありがとうございました」の挨拶をしていたと言います。そしてカートを使っても、最後は洗って返していたし、進んでゴルフ場の仕事もしていたそうです。
こうしたことから培われた彼女は単なるゴルフの技術的なことではなく、心や感性が磨かれた真の強さを育んでいったのでしょう。第一線から抜けてしまうのはとても寂しい限りですが、彼女ならまた違った活躍がきっと待っていることでしょう。できれば残された今季のメジャ-で、もう一花咲かせてくれれば言うことないですね。