会長の”三行日記”

2016.06.28

EU離脱 No.2859

 ご存知の通り、イギリスが国民投票の結果、EU(欧州連合)離脱を決めてしまいました。結果的にはキャメロン首相がとった政策の国民投票が失敗だったことになるわけですが、これで世界中に経済不安を巻き起こすことになってしまいました。

ではなぜ国民投票をしなければいけなかったのかと言いますと、首相が2期目続投を狙った昨年の総選挙でこれを公約に掲げ勝利したからです。与党の保守党の中にもEUに批判的なメンバ-が一定数いた上、離脱を掲げる英独立党が支持を広げ台頭してきたこともあり、党内分裂を避け支持を固める必要があったからです。

EUでは域内移動の自由という原則があり、これを利用しイギリスでも出稼ぎに来る移民が増えています。このため国内の雇用や福祉を圧迫しているというのは離脱派の主張です。

ですからEUでなく、イギリス独自だったら移民などを受け入れなくてよいといった考え方です。またかつては大英帝国と称し、世界中の7つの海を征していた大国で、EUに入っていなくても自国だけで十分やっていけるという誇り高き国民性が災いしたのではないでしょうか。

これにより世界中の株価は大きく下がり、円高も急速に進んでいます。一説にはかつてのリ-マンを超えるとも言われています。リ-マンは1私企業ですが今回はイギリスという一国の問題です。

まさに日本にとっても、とても対岸の火事とは言えない由々しき事態なのです。かつてのリ-マンショックのとき回復には3年という期間を要したと言われています。何しろ日本の主要基幹産業である自動車はじめ電機は国内需要が停滞している中、輸出に頼っているからです。

それが急速な円高が進めば大企業の勢いは一気に止まってしまいます。またイギリスに進出している日本企業も少なくなく、大きくその戦略を見直さなければならないことになるでしょう。今後イギリスはEUに離脱を伝えると新たな交渉が始まっていきます。

実際の離脱は原則2年の交渉期限後と言われますが、その前から通貨であるポンドの下落や株式市場の混乱で、とても離脱派が語っていた「バラ色の未来」などあるわけがないと思われるのです。既にキャメロン首相はこれを予想して早々に辞任を発表し、次期首相に交渉を委ねたことからも深刻さが窺えます。

とにかく今回の問題で日本が大きく沈まないことを何よりも願っています。求められるのは一層の差別化と独自の戦略だと危機感を持って臨んでいかなければなりません。