会長の”三行日記”
2015.01.26
イスラム国 No.2678
日本人2人の人質を立てて2億ドルを要求していたイスラム国は、そのうちの一人である湯川遥菜さんを殺したと見られ、当初の身代金を変更し、もう一人の後藤健二さんと引き換えに、新たにヨルダンに収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚という女性の釈放を求めてきました。
つまり日本からは金は引き出せないと判断した結果だと思われ、ただ殺害するより、それなら彼らにとってもっと実利のある選択を考え出したゆえのことと思われます。ではこの女性死刑囚はいったいどんな人間なのかと、少し興味をそそられます。
調べてみると、このリシャウィ死刑囚は2005年11月、ヨルダンの首都アンマンの3カ所のホテルで、米国人を含め少なくとも計57人が死亡し、300人以上が負傷した爆破テロ事件の実行犯でした。
彼女は最も被害が大きかった、米系のラディソンSASホテルの結婚式場に夫とともに潜入したのです。そして夫が自爆し、38人もの人々が犠牲になったのですが、彼女は部屋の反対側で自爆する予定でしたが、これに失敗し当局に拘束されたのです。
そしてイラク人の彼女は、イラクのアルカイダと呼ばれるザルカウィ容疑者の、「右腕」だった司令官のきょうだいだとも言われているのです。この司令官はイラク・ファルージャで殺害され、ザルカウィ容疑者も06年に米軍の空爆で既に死亡しています。
また現在、「イスラム国」を率いるバグダディ容疑者という人間も、故ザルカウィ容疑者の部下だったとされ、当時の組織の幹部たちと、さまざまなつながりがある、このリシャウィ死刑囚は「イスラム国」にとって特別な存在とも言えるみたいです。
でも果たしてヨルダンという国が、後藤健二さんと引き換えにこの死刑囚を引き渡すかどうかはかなり疑問視されているみたいです。それと言うのも、ヨルダンではイスラム国に去年の末から拘束されている、自国空軍のパイロットの解放交渉が進んでいないからです。
つまり日本人より、自国であるヨルダン人の解放を優先すべきだという意見が少なくないからです。ですから私たち日本人としては、後藤さんに何とか無事解放され戻ってきて欲しいという願いが強いものですが、予断が許されない事態となっているわけです。
こうした危険地域に自ら足を踏み入れ命がけの取材を行っている、ジャ-ナリストの後藤さんに対し、一部では自ら招いたので仕方がないという意見もないわけではないのですが、日本には生まれたばかりのお子さんもいると聞きます。
それだけに何とか無事救出を願いたいものです。それにしても全くこんなことを予期せず、周辺諸国の難民救済支援に2億ドル拠出を表明した安倍首相に何の罪もありませんが、何か因縁めいためぐり合わせが悪いようなものを感じています。