会長の”三行日記”

2014.11.19

高倉健さん No.2649

 高倉健さんが亡くなられました。昭和の最後のスタ-とも呼ばれている健さんは独特の雰囲気を持った方でした。背中で演技ができる人はこの人を置いて他にいないのではないでしょうか。

各界からその偲ぶ声がたくさん届けられていますが、やはり健さんの人柄とも言えるものと思います。新聞にも書かれていた通り、東宝ニュ-フェイスの頃、俳優座に預けられたそうですが、自分では結構器用な方だと思っていたものの、バレエや日本舞踊など何をやっても不器用で仲間に笑われていたみたいです。

そんなことで何度も俳優を辞めようと思ってはみたものの、食える飯のタネがないことからこの道で辛抱していたわけです。そして東映の任侠シリ-ズでようやく当たって本格的な役者人生が始まりました。

それから任侠シリ-ズが少し下火になってきた頃、幸せの黄色いハンカチや八甲田山といった映画に出会ったことから、また違った健さんの魅力を引き出すことができてファン層が広がったわけです。

私もこの映画の他、鉄道員(ぽっぽや)など何本か観ましたが、いつも寡黙でストイックな健さんそのもののような役柄は味わいのあるものでした。駅という映画だったかどうか、記憶は定かではありませんが、相手役の倍賞千恵子さんが「夕べ私うるさくなかった?」と聞いたシ-ン、「まるでオホ-ツクまで聞こえるかと思った」とボソッと呟くセリフが忘れられないものです。

そんな健さんは「人生は切ない。切ないからこそ、何かに『うわっ』と感じる瞬間がある」という言葉をインタビュ-で述べています。この年の3月11日に起きた東日本大震災での惨状から、もう一度自分自身を奮い立たせたみたいです。

演技に一層、切なさを抱えて生きる人の思いを込めたのです。その生涯で205本もの映画に出演したとのことですが、最後の作品となった「あなたへ」の映画ロケでは、震災のがれきの中、唇をかみしめて水を運ぶ少年の写真を台本に貼り付けて挑んだそうです。

毎朝音楽を聴きながらこれを見つめ、「宝物です。ぎゅっと気合が入る。被災地をずっと思っています」と語っています。心底優しい人なのでしょうね。享年83歳とのことですが、日本映画にこの人がいなくなると、とても寂しいものを感じます。心よりご冥福を祈ります。

明日20日より24日まで出張で会社を留守にいたします。しばらくの間、カキコミを休みますがどうぞご容赦下さい