会長の”三行日記”
2014.08.29
被害者意識 No.2618
日本で一番大切にしたい会社などの本を書いている、我々中小企業を応援して下さる法政大学の坂本光司先生が新聞にコラムを寄せていました。経営者の被害者意識を捨てよとの論調で、経営に纏わる問題は外でなく内にあるという指摘です。
消費税増税の少し前、駆け込み需要で一時忙しかった流れも一旦止まり、それがようやく持ち直してきているのではないかと思われる今日の情勢です。それでも中には業績低迷に喘いでいる企業もあることと思われます。
その言い訳はいつの時代も「景気・政策が悪い」「業績が悪い」「規模が小さい」「立地環境が悪い」「大企業大型店が悪い」という5つが挙げられます。でもそういった被害者意識に満ち満ちた経営の見方、考え方がそもそも間違っているというのです。
そしてこうした意識や姿勢では、先生が一番大切な要素として挙げている「社員やその家族」や「仕入れ先や外注先の社員・家族」など企業に関係する人々の幸せの実現など、到底できるものではないと指摘しているのです。
というのも、中小企業の中でも全国各地の現場を歩いてみると、一方では社会から存在価値が認められ、高い業績を長きにわたり実現している元気印の中小企業が数多く存在しているからです。
こうしたいい企業は規模の小さな家族的経営でも、どんな業種でも、またどんなに交通不便な地域でも存在しているのです。一例を挙げると横浜市郊外にある住宅リフォ-ム業のS社です。
1997年創業で社員数45人。現社長が勤務していた大手住宅関連企業を脱サラし創った会社です。以前の企業経営者の公私混同や業績至上主義、また密室経営に嫌気がさして独立したのです。
従って前職の経験から「公私区分経営」「ESとCSの両立経営」「超ガラス張り経営」「業績でなく継続・幸福重視経営」に愚直に取り組んだと言われています。その結果、業績は何と16年連続増収かつ黒字経営で、利益率は常に5%以上の企業になっています。
そして更に驚くのは社員の賞与にしても、リ-マンショック時も含めて10年以上、年間5か月以上を支給しているとのことです。これでは会社が嫌で離職する社員などいるはずがありません。坂本先生はこの会社の株主総会に記念講演の講師と招かれたそうです。
出席者は株主約150人のほぼ全員で、同社の社員ほぼ全員の株主の他、仕入れ先や協力企業のスタッフ、同社のサ-ビス提供を受けた地域の顧客等です。講演終了後、素敵な食事会が催され、マイクの前に立った顧客株主の年配女性がこのように話されたと言います。
「私たち年寄りの生活は心優しい社員さんたちによって支えられています。配当を減らしてもっと社員さんたちに回してください」と。何という良い会社なのでしょう。やはり問題は外ではなく、全て内にあるのですね。そして問題は社員ではなく、全て我々経営者にあるのだと、坂本先生は指摘しているのです。