会長の”三行日記”
2014.01.30
暖房ゼロ生活 No.2520
暖房ゼロ生活を実践している方の手記が面白かったので、ちょっと紹介させていただきます。一部省略している箇所もありますがご了承下さい。
列島はいま、震災後初の原発ゼロの冬。私にとっては節電を機に「暖房ゼロ生活」を始めて3度目の冬である。エアコンをつけないのはもちろんコタツも電気毛布もない。知人には「凍死するよ」と心配され、離れて暮らす親も気が気ではないようだ。
もともと、寒さはめっぽう苦手である。子どものころ冷たい布団に入るとガタガタ震えて眠れず、電気毛布が売り出されたときは何と偉大な発明かと心から感動した。夏はめったにつけないエアコンも冬はぜいたくに使い、温風に豊かさをかみしめていた。
だから今の生活は自分でも信じられない。案外あっさりと、寒さをしのぐ方法をみつけてしまったのだ。秘密兵器は「湯たんぽ」である。太ももの上に置き、大きいひざ掛けをかける。これだけで十分暖かい。寝る前には湯たんぽを布団の腰の位置に入れておき、布団に入るとき足元に移す。
朝までぬくぬくだ。電気毛布よりずっと前に、人類はこんな偉大な発明をしていたのである。部屋は冷たい。息が白いこともある。不思議なのは、こんな暮らしを始めてから、あれほど苦手だった寒さがむしろ気にならなくなったことだ。
暖房に頼っていたころ、寒さは全面的に排除すべき敵であった。暖房をやめると、その敵と共存しなくてはいけない。敵の中になんとか「よいところ」を見つけるしかなく、それはたとえば、こんなことだ。
寒い外から首をすくめて帰宅すると、誰もいない家でも少しだけ暖かい。この小さな幸せを胸に台所へ向かい、湯を沸かす。火と蒸気でまた少し暖かくなる。スズのチロリに日本酒を満たし、湯で燗をつける。十分熱くなったところでぽってりとした猪口(ちょこ)に注ぎ、そっと口をつける。
このうまさといったら!暖房の利いた部屋で、これほどの幸福は味わえまい。私たちは経済成長とともに「ある」幸せを求めてきた。金がある。電気がある。暖房がある。ああ幸せ!それに慣れると「ない」ことを恐れるようになる。でも「ない」中にも小さな幸せは無限に隠れているのだ。
なるほどと結構、考えさせられることです。当たり前のように備えられているものを、いったん切り離してみると新たな発見があるということです。私も眠るときは暖房のない部屋で、用意していただいた湯たんぽを布団の中に入れて眠ります。
そして冷たい布団の中に一歩、足を踏み入れた途端、作者ではないのですが、何とも言えない至福の気持ちになるわけです。この湯たんぽなどは、まさに日本文化が生み出した偉大な発明品とも言えるのではないでしょうか。それにしても今年の冬は寒いですね。