会長の”三行日記”
2014.01.29
東京家族 No.2519
日曜日の夜、テレビでやっていた映画「東京家族」を観ました。眠い目をこすりながら眺めていたのですが、3時間ぐらいに及ぶ長い映画の途中からは、いつの間にか惹きこまれていた自分がいました。
家族の愛を扱った映画ですが、かつての巨匠・小津安二郎監督の撮った「東京物語」のリメイク版として、フ-テンの寅さんで知られた山田洋次監督が作ったものです。
あらすじとしては、瀬戸内に二人だけで住む老夫婦が息子や娘の生活する東京に、しばしの間やってくるのですが、それぞれの生活に振り回されている子どもたちから受ける、悲喜こもごもの物語です。
その子どもたちとは個人医院を営む医者の長男や、美容院を開業している長女、そして舞台美術見習い中の次男の三人なのですが、比較的豊かな生活を送っている前記の二人に比べ、小さな時から父親にあまり相手にされず、今もどちらかと言えば貧しい生活を送る次男にだけ、東京での両親が少し心のよりどころを見つけるというものです。
次男に扮するのはイケメン俳優の妻夫木聡さんで、この恋人役が蒼井優さんです。役柄もありますが、この蒼井優さんの演技がとても良かったですね。正直な性格で、両親の話にもしっかりと耳を傾ける彼女の素直さに、吉行和子さん扮する母親がとても好印象を抱くのです。
そして間もなく病に倒れ、亡くなってしまうのですが、後日、亡き骸と共に父親が帰っていく故郷に、この二人が同行していくのです。そして葬式が終わったある日、彼女に父親がこんな言葉を投げ掛けていました。「あなたは本当にいい人ですね。息子のことをいつまでもよろしくお願いします」
このようにどこでもあるような日常的な話なのですが、山田洋次さんなりの家族の愛を描いています。そこには経済的な豊かさより心の豊かさの方が、人の気持ちをずっと幸せにしてくれるという思いが表われているような気がします。
そして慌ただしい殺伐とした都会にはない田舎の、のんびりとした豊かさや、周囲の人々の温かさが感じられるものです。一部の人の中には、巨匠・小津安二郎さんを冒涜しているような批判をする人もいますが、映画のエンディングにも触れていた、尊敬する小津安二郎監督に捧げますという言葉通りに受け取ってよいのではないでしょうか。
またずいぶんと泣かされる場面もありましたし、現在、希薄になりつつある家族という存在を見つめ直す意味でも、心動かされる映画ではないでしょうか。当たり前の日常の中にも存在する、心温まるものがとても心地よいものでした。