会長の”三行日記”

2012.04.24

魔法のフライパン No.2200

先週土曜日の朝日新聞朝刊「ひと」の欄に、魔法のフライパン開発という記事が載っていました。その厚さが4~5mmが普通とされる鋳物なのですが、1.5mmという画期的なフライパンを開発し、しかもフランスの調理器具メ-カ-と共同ブランド商品として、世界に売り出すというのです。
 
でもここまでの道のりは、そんなに容易いものではなかったようです。ちょっとその記事を紹介いたします。
 
三重県木曽岬町にある鋳造会社の2代目。従業員7人で、工業製品の部品の下請けだった。バブル崩壊後、メーカーから「代わりはいくらでもいる」と切り捨てられた。

そんな時、新聞の言葉が目にとまった。「3分の1の価格競争で戦うか、3倍困難な技術で戦うか」。鋳物フライパンの薄さを極めると決めた。32歳だった。

「1階部分で飯を食って、2階で夢を」。部品の下請けで稼ぎながら、合間に図面を引き、鉄を溶かし続けた。試作を繰り返して9年。鉄や炭素の配合ミスによる偶然で「1.5ミリ」が生まれた。

試作品を使った有名レストランのシェフは「鉄板、フッ素樹脂に続く第3のフライパン革命」と絶賛した。熱伝導に優れ、焼きムラができない。注文が相次ぎ、数年前まで納品に2、3年かかった。

円高で企業の海外移転が進むいま、中小企業が生き残るには「3倍の強みが必要」だと言う。「2倍では追いつかれてしまうから」。努力を続ける原動力は「好き」という気持ちだ。「僕が好きなのは、『すごい』と言われること」 

 
社長は錦見泰郎さんと言い、その開発に10年もの歳月を要しました。価格は外径が26センチの標準形で、1万500円と従来の商品に比べて高いですが、「このフライパンで作った料理がおいしい」と評判になり、10万個も売った人気商品となったのです。
 
多くもの中小企業が、こうした同じような価格競争の悩みを抱えているのが現代です。でも錦見さんのように、潔く従来の競争品を切り捨て、その夢を追いかけることのできる人は少ないものです。
 
また、この製品は全て手作りとのことです。ですから注文を受けても、納品までには長い時間が掛かると言います。そして製造現場は“きつい、汚い、危険”の3Kの職場で、若者からは敬遠されがちです。
 
でも人員を増やし、量産体制を整備しながら3K職場の改善も図っていったそうです。そして「料理がおいしい」という、人々のこの製品への評判が、何よりも社員のやる気に繋がっていったのでしょう。やはりオンリ-ワンの企業を目指さなければいけませんね。