会長の”三行日記”

2012.03.27

施して報いを求めず No.2182

施して報いを求めず 受けて恩を忘れず」という言葉があります。仏教で布施というのは、目上の者が目下に施してやるというふうには使っておらず、その逆で、布施することによって、物欲とか財物への執着の心を捨てさせて戴くと解釈しているみたいです。

まさにこれが大乗仏教の大切な考え方で、布施することによって仏道の実践ができると言われています。こんな話が紹介されていました。

博多に仙厓さん(1751~1837)というお坊さんがおりました。寺に帰ろうとすると、一天にわかにかきくもって夕立が来そうになりました。

急ぎ足になって足に力が入ったとたん、プツンと下駄の鼻緒がきれてしまいました。門前の豆腐屋のおかみさんが見つけて、頭にかぶっていた手拭いを裂いて鼻緒をすげてくれました。

仙厓さんは丁寧におじぎをして駆け去りました。「あの和尚、偉いという評判だが、例も言わないとんでもない坊さんだ」と、ぼやきました。

世の中には、これを告げ口する親切な人がいて、仙厓さんの耳に入りました。すると仙厓さんは「なんだ、豆腐屋のおかみさんは、礼を言って欲しかったのか。わしは、一生忘れんつもりだったのに」と言ったそうです。

おかみさんは仙厓さんを見た時、無心でとんでいったのに、時間の経過と共に「親切をしてやったぞ」という功徳意識が沸いてきたのでしょう。

さりげなく他人に施す、結構、これが難しいことではないでしょうか。どうしても相手にその見返りを求めたくなるものです。ですから誰がしてくれたのか、気づかないように振舞える人って、やはり凄い人なのでしょうね。

とかく自分の責務もしっかり果たさない人に限って、ちっぽけなことをやったに過ぎなくても、自己アピ-ルをしがちです。なかなか真似のできない生き方ですが、さりげなく徳を積み重ねている人は素敵です。