会長の”三行日記”

2011.12.21

ちょっと良い話part86 No.2129

新聞の投稿欄から拾った、「日本人の心の温かさを知った」という、今年最後になる、ちょっと良い話です。殺伐としているような今の世の中で、これが本来の日本人だと知らされた話でもあります。
 
中国から11年前に来日した当初、日本に溶け込めず、日本人の冷たさを感じる時期があった。その後も違和感のようなものはあったが、先月の出来事が私の気持ちを大きく変えた。

1歳の長男と名鉄瀬戸線の森下駅で降りる際、開く扉の戸袋の隙間に息子の右腕が引き込まれてしまった。乗客の男性が非常ボタンを押し、周囲の人と戸袋の隙間を力いっぱい広げようとした。

大泣きする息子に男性は「大丈夫!もうちょっとだから」。乗務員さんが手動で扉を開け、息子の腕が抜けた時、歓声が上がった。駅員さんが病院に付き添い、翌日も見舞いの電話をいただいた。

私は驚いた。見知らぬ子どものために、たくさんの人が必死に助けようとしてくれたことに。日本では「渡る世間に鬼はない」というが、本当だ。人の心の温かさに触れ、幸せな気持ちになった。

 
ちょっぴり心の和むお話です。でもこれが私たち日本人の本来の姿ではないでしょうか。人が困っていたら、そのまま見過ごせない。そして「袖すり合うも他生の縁」という言葉もあるくらい、関わりあう人たちは全くの他人ではないという、旧来の教えです。
 
今年、不幸にして東日本大震災が起こり、多くの人たちが犠牲になり、信じられないくらいの尊い命まで奪われてしまいました。今でも当時の映像や、その後の変わり果てた、それぞれの地の様子を眺めると、本当に身につまされる思いで胸がいっぱいとなるものです。
 
そんな思いから、せめて自分にできることは何かと考えた結果が、全国から寄せられた、かつてないほどの多くの善意ではなかったでしょうか。
 
一部の方は今でも定期的に被災地でのボランティアを続けています。本当に頭の下がる思いです。触れたくはありませんが、これが先日少し紹介した、中国での2歳の女の子が車にひかれたのに、18人もの人たちがそれを見過ごし通り過ぎていった、ということと根本的に違うところです。
 
日本人の持つ、生来の人間的な優しさがあるからでしょう。今年は総括的に良い年ではありませんでした。でも今年を象徴した言葉「絆」を改めて見直し、さらに強めていく転機にもなったような気がします。