会長の”三行日記”

2011.09.16

選ばれる会社とは No.2075

戸田建設が大手を向こうに回し、目ざましい受注を繰り広げているという記事を目にしました。「戸田がまた暴れた」と言って、大手ゼネコンの間で、準大手の同社が怖れられている存在となっているのです。
 
ここ数年、大学や公立、日本赤十字などの大型医療施設を相次いで落札しているのです。2011年の3月期の建築分野における、医療・福祉関連の受注実績では、決算等その資料によると、清水建設が1285億円、鹿島が878億円、大林組が730億円(5社のうち大成建設と竹中工務店は、詳細を非公表)に比べ、戸田建設は1326億円と大手を上回る実績を残していると言われています。
 
つまりこの分野では、東京都健康長寿医療センターや埼玉県立がんセンター新病院などを受注した昨年は、年間受注高が1兆円を超える大手ゼネコン5社を上回る、業界ナンバーワンの実績を挙げているのです。
 
この業界には詳しくはありませんが、このことはずいぶんと驚異的なことではないでしょうか。同業者である準大手の幹部話では、長年の実績と信頼がある幹部社員の力量がないと成約に結び付かない世界だと言われています。
 
従って戸田建設は成約できるだけの食い込んでいる組織力と、安価の受注力を兼ね備えているということになります。そして、もともと病院や大学の施設が得意とされているからとも言われています。
 
そもそも、その原動力は92歳で今尚、取締役を務めるオ-ナ-から生まれているようです。人員は大手の1/3に当たる5000人体制ですが、4年前に代表取締役会長を退いた、オ-ナ-の戸田順之助さんは創業者から3代目に当たりますが、20年間務めた会長を退いても取締役を辞めず、会社に残っているそうです。
 
つまり1945年に常務に就任して以来、66年間経営の第1線に携っているのです。その薫陶を受けた幹部は、優良なリピート客を増やすという営業路線を受け継いで、総合病院や大学本部の幹部への長年のトップセールスを怠りませんでした。
 
そしてこの8年間、2代続けて非同族の社長が就任し、一般社員に至るまで、統率のよく取れた他のゼネコンと一線を画する社風が培われたと言われているのです。
 
それを表わすエピソ-ドにこんなことがあります。就任4年の井上舜三社長は、ある東北の地方病院応札で、プレゼンテーション役を自ら買って出て、最後まで熱弁を振るったそうです。他の大手ゼネコン幹部は冒頭のあいさつ程度で、専門部署の幹部に説明を譲ったのに、細かな仕様まで全部自分で仕切ったと言われているのです。
 
ただ原稿を読むのではなく、頭の中にしっかりとその概要が詰まってなければ為せないことです。それだけ仕事に取り組む意欲とか姿勢が違っていることは、客先から見ても明らかではないでしょうか。
 
狙った獲物は逃がさず、社長という絶対的立場でも、権力を内向きに行使せず、外向きに「看板」を最大限利用するという体制が敷かれているのです。これでは強いはずですね。
 
改めて社長とは何かということを教えられたような気がします。とても比べようもない、我々零細企業でも、営業といった1点でも、社長の責任と使命が大きいことを痛感しています。私たち中小零細企業の浮沈はやはりこの社長の姿勢次第ですね。