会長の”三行日記”
2011.09.08
父と子 No.2069
地元の新聞によく投稿をされている、眼科医の方がこんなことを書かれていました。
父と子という題の、このような内容です。出掛けたある温泉場での出来事です。露天風呂に入ると、小学校2、3年生ぐらいの男の子がたった一人で湯船に入っていました。
どこから来たのとか、何気ない会話をいくつか交わした後、この少年をよく見るとタオルを着けたまま、湯船に入っていることに気がつきました。
先生はちょっと迷ったのですが、少年にこう伝えました。「僕、湯船の中にタオルは入れないほうがいいよ。みんなが入るのに、お湯が汚れるからね」こう言った途端、少年は素直にタオルを湯船から出しました。
しばらくすると、この少年の父親が入ってきたのです。そして少年と同じように、タオルを着けたまま湯船に入りました。並んで湯に浸かっていた少年は、父親に問い掛けました。
「お父さん、湯船の中にタオルを入れてもいいの」、「別にかまわないさ」 二人と対面する形で湯に入っていた先生は、少年の様子を観察していました。父親の返事を聞いた少年は、それでも外に出していたタオルを再び湯の中に入れようとはしませんでした。
そして湯から上がった脱衣所で、父親から離れた少年に先生はこう言いました。「僕、偉かったね」、少年は少し、はにかみながらも嬉しそうに出て行ったのです。
こうした、小さな何気ないやりとりかもしれませんが、爽やかな話ではないでしょうか。先生がこの少年にこうしたアドバイスを送らなければ、きっといつまでも気がつくことがなかったでしょう。
まして父親がそのことに全く気がついていないのですから、尚更のことです。この話を読んで、このような先人からの教えや言い伝えを、正しいことであれば後世に、特に自分の子どもですら伝えきれていない親が多いように思えます。また気がついていないとも言えるかもしれません。
そしてもう一つ、他人から教えられたことと、父親からの言葉が食い違い、少年なりに心の中で小さな葛藤があったのではないでしょうか。それを小さな胸で受け止めた後の対応は、見事でした。
私たちはこの先生のように、正しいと思ったことはやはり、これからの時代を担う世代に、たとえ勇気が要ることでも伝えていかなければなりません。それが今の世に生きる責任として、思いやりと優しさを社会に育むことに繋がっていくのではないでしょうか。