会長の”三行日記”
2011.06.28
世界遺産登録 No.2034
小笠原と平泉が世界遺産に登録されました。人類の至宝とも呼ばれる、この世界遺産への登録は本当に喜ばしいことです。
2つのうち、小笠原はまだ一度も訪れたことがありませんが、平泉にはここ4~5年で2回ほど行かせていただきました。まず代表するのは何と言っても中尊寺です。金色堂でよく知られた中尊寺ですが、平安時代の後期、約百年続いた奥州藤原氏の初代、藤原清衡(きよひら)が建立したと言われているお寺です。
奥の細道で知られた俳人・松尾芭蕉の詠んだ、「夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡」という句も、ちょうど今頃の時期、草いきれの高台に立ち、この地で非業の死を遂げた源義経らを偲んで生まれたとも言われています。
またこの中尊寺には3000点以上の国宝・重要文化財があり、今日まで私たちに守り伝えているとのことです。きらびやかな金色堂を除き、この中尊寺からは何とも言えない、東北の落ち着いた厳かな雰囲気が伝わってくるものです。
それからもう少し足を延ばすと、やはり素敵な毛越寺(もうつうじ)というお寺があります。越という字はつうとは読みませんが、”おつ”と読むことから、もうおつじとなり、それが”もうつじ”、”もうつうじ”と変わっていたようです。
毛越寺にある浄土庭園と呼ばれる庭園には、とても癒されたものです。大泉が池という、真ん中に位置する池に船が浮かべられていて、当時の平安衣装を纏った人たちが、池の向かい側まで優雅に漕ぎ出していました。
またその周囲には築山や州浜のようなものが設けられ、池に注ぐ小さなせせらぎには、句をしたためた色紙をそっと浮かべていたものです。ですから、ほとんど平安時代そのもののような雰囲気にさせて頂いたのが強く記憶に残っています。
こうした極楽浄土の世界を表現したと思われる庭園なのですが、やはり当時の3代続いたと言われる藤原氏の力が強かったのでしょう。それが義経と親しくなったばっかりに、源頼朝の怒りに触れ、滅亡への道を辿ってしまったのです。
そうした栄枯盛衰が、後にこの地を訪れた俳聖・松尾芭蕉の心に止まって、あのような名句が生まれたのではないでしょうか。とにかく一見には十分値する、素晴らしい地域です。是非これを良い機会として、被災地・東北振興に役立つことを何よりも願うものです。
また船で片道25時間半という、半端な距離ではない楽園・小笠原の地にも、是非一度は訪れてみたいと思っています。併せて固有種保全の為、外来種の持込禁止を貫くこの地が、今同様、いつまでも美しい自然遺産のままでいることを願っています。