会長の”三行日記”
2011.05.25
坂本光司先生講演から No.2014
地元の信用金庫が主催する、夢企業大賞という、この地域で活躍している中小企業の優れた技術や、ビジネスプランへの表彰とプレゼンの場に参加してまいりました。表彰企業の取り組みを知りたかったのと、もう一つ、第2部で坂本光司先生の記念講演があったからです。
坂本先生はご存知のとおり、頑張る中小企業の応援団長のような方です。現在でも週に2日ぐらいは、様々な企業の取り組んでいる現場に足を運ばれているとのことですが、その講演について触れさせていただきます。
今回の講演は「地域に愛され、快進撃を続けている会社とは」との演題でお話しいただきました。冒頭、カリブ海から来た一人の女性について触れていました。西水美恵子さんと言って、元世界銀行副総裁として活躍された方です。
西水さんについてはネットでも少し調べさせていただきました。元々はアメリカのプリンストン大学で教鞭をとっていた方なのですが、あるとき世界銀行への誘いを受けました。
好待遇に加え、研究休暇として1年ならということで、軽く引き受けたつもりでしたが、運命的に彼女の人生を変えてしまうほどのことが、そこには待ち構えていたのです。
世界の貧困の現実に直面したのです。それからというもの、世界の貧困を失くしたいとの強い思いで活動が始まりました。ヒマラヤの東、高地3000mの地に人口80万人ぐらいのブ-タンという国があります。
GNH(国民総幸福度数)を追い求めている国で、住民の97%が幸せを感じている国と言います。西水さんはこのブ-タンを知らしめたことでも有名な方です。
坂本先生はカリブ海からやってきた西水さんを、磐田のある会社にお連れしたそうです。社員300人のコ-ケン工業という会社です。この会社はいつの日か世の為人のため貢献したいという、夢を追い続けている会社です。
この会社で働いている人には弱い立場の人が多いそうです。60歳以上が30%もいて、93歳の人を筆頭に83,81歳と、80以上の方も3人もいるとのことです。
93歳の方は松下さんと言われる女性ですが、先生は会社の中に入っていっても気がつかなかったそうです。そのくらい、会社の中に活かされて融け込んでいるとも言えるのです。
この松下さんが今から13年前、ちょうど80歳の誕生日を迎える数日前、事務所の真ん中に位置する社長の村松さんに相談があると訪れてこう言われたそうです。
「私は80歳になる。これ以上勤めると皆に迷惑を掛けるかもしれない。もう退いた方がよいのではないか」と。これを聞いた村松社長は次のように答えたそうです。「あなたは会社には必要な人材です。もし体調が悪いのであれば、1日置きでも午後からでもよいから勤めて下さい」
事務所には社長の他に大勢の社員の方がいます。大きな声でのやりとりですから、他の社員の方の耳にも当然届きます。会話は事務所中に伝わり、このやりとりを聞いていたほぼ全員が涙していたと言います。
何て優しい会社だろう、死ぬまでいたいと思える会社ではないか、こう思いながら先生と西水さんまでつられて涙を流したと言っていました。今回は講演のほんの触りの部分しか紹介できませんでした。続きはまた次回触れさせていただきます。
それにしても何て素晴らしい会社なのでしょう。この他にも5%に当たる15人の障がい者が働くと言います。またその大半は重度の障がい者なのですが、正社員として採用しているそうです。60歳以上が30%、そして障がい者が5%という数字は、まさにこの国の比率とピッタリです。
こうした定年のない会社(この会社では引退と呼ぶそうです)はこれからの日本の目指すべき方向ではないでしょうか。