会長の”三行日記”

2011.03.30

決死の沈静化作業 No.1980

日々悪戦苦闘している福島第1原発の沈静化作業に、多くの人たちが現地で携っています。放射能の危険に直面しているだけに、まさに命がけの仕事とも言えるわけです。
 
まず注目されていたのが、燃料プ-ルの冷却用に放水していた自衛官や消防隊員の人たちです。この事故処理に当たっていた方の奥さんが「私は既に覚悟を決めています」と話されていました。ご主人同様、何とも見上げた姿勢ではないでしょうか。
 
また別の奥さんは「日本の救世主になって下さい」と言って送り出したそうです。まさに戦場に出掛けるようなものですから、なかなか真似のできない、胸を打たれる言葉です。
 
そして誰もがやりたくないと思われるものですが、そうした本音は一切見せることなく、決死の作業に命を張って携っているのです。大げさに言えば、こうした方々に私たちの運命を預けなければいけないような、逼迫した状況が今なのです。
 
そんな過酷な作業に当たっている、ある自衛隊員は「宣誓しているから」と口にします。自衛隊入隊時、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います」との宣誓の言葉に嘘はつけないと話しています。
 
またこうした隊員の中には、「妻は自衛官だからわかってくれている。4歳と0歳の子供がいるんだけど、上の子がテレビの消防の映像を見て、『これ、お父さん一人でやるの?』っていうんだ。『俺が終わらせてくる』っていってきたよ」という人の話も紹介されていました。
 
改めてこうした緊急時の役割の重さを感じさせられるものです。また作業員の中には、被爆するかもしれないという恐怖と戦いながら、建屋内で懸命に沈静化と復旧作業の活動を続けている人たちがいます。
 
その多くは原発建設に携った関連会社の技術員と、東京電力というよりはむしろ下請けに当たる作業員の人たちで、先日も高濃度の放射能を含んだ、たまり水により被爆して入院した人たちがこれに当たります。
 
ポンプを動かす電源復旧の為、ケ-ブル敷設作業に当たっていたわけですが、一刻も早い現場作業を求められていたのでしょう。そうした原発での現場作業員が一番気にしているのが、“タマがあるかないか”ということらしいのです。
 
このタマとは、人間が1年間に放射線を浴びても大丈夫な許容量が決められているわけですが、それを指すもので、毎日炉心近くで作業を営む人にとっては、どんどんその許容量が少なくなっていくわけです。
 
それだけに、あとどのくらい許容量が残っているかどうかが作業の目安となっているのです。こうしてベテランの作業員ほどタマが少なくなっている関係で、比較的経験の浅い、タマが残っている若い人が起用されることになるようです。
 
とにかく、そんな方たちの奮闘のお陰で、沈静化に向けた作業が繰り返され、何とかこれ以上の被害の拡大を防ぐことができているわけです。改めてこの決死作業に取り組む方々に感謝し、何よりもその安全を祈り、原発事故の早期復旧と避難されている方々の無事帰還を願うものです。