株式会社 アイソー




2007年11月の日記

田端俊久さん講演より

[2007年11月30日(金曜日)|No.1329]

中村文昭さんの師である田端俊久さんの講演会が、東京の日本青年館で開かれ行ってまいりました。会場は1000人を超す方が詰め掛け、大変な熱気で盛り上がっていましたが、不思議なことにほとんどその講演を聴くのは初めての人達とのことで、これも中村文昭さん人気によるものと思われたものです。
 
「日本人力」という演題がついた講演の冒頭、田端さんから今回が最後の講演にしたいとの報告が告げられました。27歳の時掛かり、僧侶を頼って半年で克服完治したガンが、ここにきてまた再発したからです。
 
死ぬのは怖くない、嬉しかったり感動した時には涙が出るのに、恐怖で泣いたことは一度もないと言われる田端さんですが、でも死ぬまでにもっともっと思い残すことなく、自身が設立している道場・賢人塾にて伝えたいからと言われていました。
 
従ってこの日が最後の講演会とのことからか、いつもは用意しない講演内容のプリントを携えたり、6時45分から10時過ぎまでに及ぶ長時間のものになったのかもしれません。
 
話の内容はほとんど現在の日本人を憂いているものでした。27歳の時決意し、その活動は18〜19年目に入っているわけですが、現在の日本の状況は予想していたものではなかったと言っています。
 
田端さんの話には、これからの日本をどうしていくのか、また日本をもっともっと素晴らしい国にしたいという熱い想いが満ち溢れていました。それにはまず武士道の精神に学ぶこと多しと指摘していました。以下報告の要点だけ記します。
 
・常在戦場とした武士の心のあり方、江戸時代の中級武士の暮らしを模範に
 せよ
・自然と礼節が定まり、人の道に外れることなく日常が全て修行が武士道の
 精神
・その精神を日本人は忘れ去ろうとしているが、この侍にあこがれるのは外国
 人のほうが多く、フランスやイギリスなど日の丸を掲げ、2礼2拍手で神棚に
 拝んでから武道を行っているとのこと 
・今日という日はこれからの未来に向かう輝く日と共に、今生の別れになるか
 も知れない日。従って今日という日を大切に生きること
・日本は世界で一番自国文化の教養がなくなった国である
・非日常空間がよい京都に若き日あこがれていたが、今の京都はおかしい。
 ここは日本を守らなければいけない場所である
・何か1つでも日本の伝統的なものを明日からやってもらいたい
・適者生存の掟といい、理に適ったものは存続していく
・娘達からもらった1枚のCDの中に入っていた、平原綾香のジュピタ−は新潟
 の被災者の励ましになったとも言われ、その歌詞が素晴らしい

 
その他まだまだ書き足れないくらいありますが、詳しくはまた次回に触れたいと思います。とにかく残された時間がないだけに、与えられた時間を精一杯活かせて生きていることが、何よりも強く伝わってきました。
 
会場には弟子に当たる中村文昭さんも見えていましたが、こう言ったら語弊があるかもしれませんが、少し商売がかっている中村さんに比べ、やはりその存在感を感じたものです。


点と線

[2007年11月29日(木曜日)|No.1328]

先週末、2日間テレビで松本清張氏の名作「点と線」をドラマ放映していました。ビ−トたけしさん主演のこのドラマを、たまたま観る機会に恵まれ、しばしこのテレビに釘付けになったものです。
 
元々の小説で描き出そうとしていた視点が鋭いところに加え、テレビドラマもたけしさんの熱演も手伝い、とても面白いものになっていました。
 
物語はビ−トたけしさん扮する鳥飼刑事が所轄の博多警察署から上京し、この刑事に刺激された警視庁捜査二課の若手刑事とともに、産業建設省の汚職による殺人事件の謎を解いていくというものです。
 
中でも東京駅の13番ホ−ムから15番ホ−ムを見渡すことができるのが、1日のうち、たった4分間しかないのに目撃したと証言する容疑者を不審に思い、アリバイを崩していく筋書きの面白さに惹かれました。
 
新幹線がない時代で、特急も少なく飛行機も一般的でなかったことから、殺人が起こった福岡県香椎と、アリバイがあると言われた北海道と東京を結ぶ列車時刻表のトリックから紐解いていく、まさに点と線の物語です。
 
ちょうどそのタイミングを計ったように、この時期、証人喚問うんぬんで騒がれている、額賀財務大臣のアリバイが問題とされています。既に逮捕された守屋前防衛省事務次官の供述と異なり、本人は家族と一緒にいて宴席には出ていないと述べているからです。
 
でも1年も経っていない昨年の12月の話ですから、この食い違いも不思議なところです。とにかく早く明らかにしてもらいたいものです。
 
既に守屋前次官は多額の接待の見返りに、防衛装備品の納入に関し、山田洋行への便宜を図ったのは明らかになったようなものですから、これからは政治家がこの汚職にいかに関与していたのかがポイントです。
 
でもどうでしょう、どこまで追求できるのでしょうか。ドラマのように、最後は大元に捜査が及ぶことなく、業者側の自殺により、真実を闇から闇へと葬ってしまいます。全く似たような展開に奇異を感ずるところですが、唯一救いは官のオオモノが逮捕されたことです。
 
誰が見ても賄賂に違いない次官の軽挙妄動の裏には、政治家を筆頭とした大きな疑獄が潜んでいるかもしれません。いち早く、国民の納得するような解決を図ってもらいたいものです。それにしても、私たちの知らないところで、とんでもないことが行われていることに大きな驚きと失望を覚えるものです。


不透明な時代を生きるのには

[2007年11月26日(月曜日)|No.1327]

今週の運勢はバッチリ全てがうまく廻っていくとなっています。私はB型で自分勝手が強い方なので、この運勢も良い時だけは信じて、悪い時は気にしないようにしています。ですから信じているわけではないのですが、良い時はやはり嬉しいものです。
 
サブプライム問題で大手金融機関は多額の損失を出しているものの、大企業は依然高収益を上げ続けています。こんな中、景気が好いという実感がほとんど感じられないのが、私達、中小企業の現況ではないかと思われます。
 
一時的に仕事が繁忙を極めてもそれが継続しない、また先の展望が読めないというのが実情ではないでしょうか。またそれに追い討ちをかけるように、原油高による材料の値上げです。投機筋からの影響で1バレル100ドルを超え、この先どこまでいくのか、全く読めない状況にまでなっています。
 
こんな中、新聞で目にしたのですが、ある上場企業は経常利益が全上場企業の中で5番目にもかかわらず、早期退職を募ったということが載っていました。その記事によると、かつての金融危機から全産業の経常利益は倍増したのに、雇用者全体の報酬は6%も減ったと指摘していました。
 
まさに先日研修会で指摘されていたとおり、究極の形、社長一人の大企業への出現に向かっているような流れです。正社員はカットされ、人材派遣主導による労務体系です。これはまた過日、東京同友会経営研究集会の創作劇で眺めた、10年後のわたしたちの姿そのものです。
 
全て契約社会でビジネスライクされ、人としての優しさとか思いやりなどは一切そこには存在しません。しかしこうした割り切られた社会においては、人としての生きがいだとか人間らしさを見出すことが疑問です。
 
ここで唯一、地域に根ざす、私達中小企業の出番があるのではないでしょうか。同友会が日頃言っているところの、経営者自らが、社員とともに学びを深めていくという共育の考え方です。またそれはあらゆる可能性を社員から見出し、それを育て上げていくことによる企業の継続と発展は、経営者の大きな責任であるという考えに繋がっていくものです。
 
人間は競争だけでは生きるものではなく、共有、共生、共存の考えで、人間らしく生きたいと思っています。それが大企業との差別化であり、中小企業の特色を活かす道ではないかと考えます。
 
明日(11/27)から2日間、出張のためカキコミは休ませていただきます。


いい夫婦の日

[2007年11月22日(木曜日)|No.1326]

11月22日、いい(良い)夫婦の日ですね。「仲良きことは美しきかな」と武者小路実篤さんも言われているとおり、いつまでもかけがえのない存在として、末永く仲良くありたいものです。
 
少し差し障りがあるかもしれませんが、最近シングルマザ−とか、バツイチとか呼ばれる、折角結ばれても離婚をしなければいけないカップルが増えているようにも覚えます。
 
これも欧米化している影響なのでしょうが、日本の昔から言い伝えられている「子はかすがい」というのも威力を弱めているようです。これも価値観が多様化してきたことによるものでしょうが、結晶とも言える子どもの存在があれば、できればそのことを最優先して考えてもらいたいものです。
 
それでもこうした離婚には言うに言えない様々な事情があるのでしょう。しかし離婚ではないのですが、以下のようなケ−スも少なくありません。
 
息子が結婚することになり、一緒に住むのには狭すぎるため、息子からも自分たちも金を出すからと言われて、二世帯住宅を建てることになり仲良く住み始めました。
 
ところが住みだして1年も経たないうちに、嫁と息子の両親の折り合いが悪くなり、とうとう息子達夫婦は出て行くことになって、月々の住宅ロ−ンを両親達で払わなければいけなくなったという話です。
 
こうした夫婦だけの問題にとどまらず、派生する環境や経済等の諸条件にも左右されやすいことから、夫婦が長く連れ添っていくというのも、なかなか大変な労力を必要とするものです。
 
でも折角縁あって結ばれたものですから、できる限り壊さないよう大切にしていきたいものです。それにはやはり相手の立場に考えてやる気遣いや思いやりが必要となるものです。過日の知人の結婚式でも述べた負ける練習がそれぞれに求められるものです。
 
日頃の身勝手な生き方を振り返る、よい機会かもしれません。ある日突然、「今日から別々に生きましょう」との引導を渡されることのないように、私自身も十分心がけなければと思い知らされています。


世界への挑戦

[2007年11月21日(水曜日)|No.1325]

今シ−ズン日本女子プロゴルフの賞金王となったのは21歳の上田桃子選手ですが、この人見るからに負けず嫌いの性格で、気持ちの強いところが感じられます。
 
惜しくも最後で負けたときなど、クラブハウスのロッカ−で辺り構わず、号泣することも少なくないと言われています。もっと前に勝っていたと思っていたのですが、今シ−ズンになってやっと初優勝、そして文句なしの賞金女王に上り詰めたのですから大したものです。
 
こういった気の強い選手はどんどん宮里藍ちゃんみたいに世界に飛び出して行くべきです。藍ちゃんはその体力の影響か、ここにきて少し伸び悩んでいるみたいですが、もともとハ−ドなUSPLGAですから、そんなに甘いものではありません。
 
でも持ち前の優れたセンスできっと壁を乗り越えていけるものと確信しています。一方、この上田選手も先日、日本で開催されたこのツア−の一つである、ミズノクラシック優勝で来季アメリカツア−のシ−ドを手に入れました。是非果敢に挑戦してもらいたいものです。
 
そうそう、このミズノクラシックではパ−5のところを2打で入れてしまう、アルバトロスを達成していました。こうした自分についた技術だけのものではない好運を、是非活かせてもらいたいものです。
 
それにしてもこの上田桃子選手や、マラソンの野口みずき選手、スケ−トの浅田真央ちゃんなど皆、世界に羽ばたいている選手は女子選手ばかりです。また先日惜しくも女子バレ−はここでは北京への切符は獲得できませんでしたが、きっと頑張って何とかしてくれるでしょう。
 
こうしてみるとちょっと私達、男の存在が影薄いですね。ニュ−スによく出てきて、頭を下げ続けている男どもはもっぱら不祥事ばかりです。こんなままでは、そのうち世の中における主導権を握る立場が逆転していくのではないでしょうか。男の奮起が求められています。


技能五輪国際大会からその1

[2007年11月20日(火曜日)|No.1324]

明日の閉会式を残し、技能五輪国際大会が終了しました。昨日もおもてなし広場にブ−ス設営していた関係で、装置の搬出やら後片付けで行ってまいりました。
 
兵どもの夢の跡ではないのですが、まだ朝方の9時頃という時間帯にもかかわらず、広場のテントは撤収され、それぞれの団体で出展していた品物や道具が散乱し、華やかだった前日までとは打って変わった様子を呈していました。
 
このへんがちょっと統一性のないところで、貴重なものなど紛失したら誰が責任を取るのか訝しく思えるものです。私どもも行ったときには、もう装置に被せてあったブル−テントが不明で、お借りしたものを紛失してしまった始末です。
 
まあそんなお粗末なところもありましたが、全体的にはこの技能五輪、大成功と言えるのではないでしょうか。当初、懸念していた来場者数も、正式な数字はまだ知らされていませんが、かなりの数だったのではないでしょうか。
 
15日と17日の2日間、ブ−スに詰めていただけでも、押し寄せる人の数からしておおよそ推測できるものでした。先日も触れましたが、これも市内40数校ある小中学校が、今回の大会参加国それぞれのサポ−タ−に分かれて応援するという、一国一校の支援体制が少なからず功を奏したものと考えます。
 
良かったのは、子ども達がそれぞれ付いた国について、よく知ろうと学んでいったことや理解を深めたことではないでしょうか。それは私達大人の感覚ではなく、子ども達が自由に学び取る感性を育むことにも繋がっていったものと思われます。きっとそれはこれからのグロ−バル化社会にも役立っていくことでしょう。
 
一方ではこの制度のお陰で、子ども達のみならず親達もこのイベントを周知することになりました。ですから事前でのPR活動を、いまいち弱いのではないかと懸念していたこともこのお陰で吹き飛びました。
 
とにかく、このように人がワクワクしながら集まるしくみの大切さを知らされました。それは断じて行政が力を注いでいるハコモノ作りではなく、人々の感性に訴えたソフトとかしくみ作りです。
 
田舎の街だと思っていた我が町に、無料のシャトルバスなどの送迎で大勢のお客様が訪れる光景は、やはり眺めていて嬉しいし楽しいものです。次回は写真を交えて、真剣な選手達の競技風景を紹介したいと思います。


オシム監督倒れる

[2007年11月19日(月曜日)|No.1323]

その人の功績とか評価というものは、亡くなったりした時や、いなくなって初めて表われるものです。サッカ−・全日本、オシム監督が脳梗塞で倒れてしまいました。
 
現在、千葉順天堂病院で必死の手当を受けているとのことですが、依然予断を許さないような状況です。このオシム監督が倒れてから、サッカ−協会の川渕会長などの関係者のみならず、多くのサパ−タ−からその回復を願う声が強く巻き起こっています。
 
昨日行われたJ1リ−グ、ジェフ千葉戦では多くのサポ−タ−が必死の願いで折った千羽鶴や、寄せ書きが集められていました。中には命だけでも取り留めて欲しいと、涙ながらに訴えている姿に、こちらまで胸を打たれるものがありました。
 
これだけの声が届けられるのも、やはりその手腕なのでしょう。J1のお荷物的存在であったジェフ市原を就任早々で優勝を争えるチ−ムに導きました。その後日本代表となった阿部勇樹選手や巻誠一郎選手にとっては育ての親とも言える存在ではないでしょうか。
 
また監督としての姿勢も評価されている一つです。とにかく自分の眼で眺め、確かめながらの行動は休むことを知らなかったと言われています。これが外人監督でありながら、一時的な腰掛け的存在ではなく、日本の将来を見据えている指導だっただけに、評価される所以ではないかと思います。
 
走るサッカ−やPK戦などを見なかったことなどでもよく知られています。今、考えれば心臓に持病をあっただけに、PK戦などを眺めるのは本当に心臓によくなかったからでしょう。とにかく、その名のとおり、惜しむ(惜しまれる)監督だけに、一日も早い回復を祈りたいものです。
 


技能五輪国際大会開幕

[2007年11月15日(木曜日)|No.1322]

いよいよ技能五輪が開幕しました。朝から17時まで、総合案内のおもてなし会場に、中小企業家同友会沼津支部のブ−スも出展していることから、一日詰めてまいりました。
 
我が支部は”からくりグッドラック”といって、ゴルフボ−ルを転がすと回転板が回りながら受け止め、1周近く廻ったところで、音楽が鳴り出し、魚の鯵がコンベヤ上を動き出し、反対側まで行くとヒラキに変わって流れてきて、最後には”ようこそ沼津へ”という看板がスクロ−ルする装置を出展しています。
 
と言っても、ハイテクな技術というものではなく、会員企業内のいろいろな技術を持ち寄り、製作したものです。いわば各企業のコラボレ−ションという形で、初めてこうした機会を利用して作られました。
 
初日の人の出は思ったより多かったのではないでしょうか。お天気にも恵まれ、小学生から中高年に至るまで幅広い年代の方々が詰め掛けていました。この影響で私たちブ−スもかなりの人が来てくれました。特に子ども達の興味を惹くことが多く、どうして音が鳴り出すのだろうかとか、熱心に見つめてくれる子も少なくありませんでした。
 
予報によると競技が開催される4日間とも、お天気が崩れるという心配も少ないみたいで、まずはほっとしています。というのも、このおもてなし広場が設置されているスペ−スは大した整地もされてなく、土がむき出しになっているような場所だからです。
 
従って雨が降ったら悲惨に思えるような所なのです。言っては悪いが、こうしたところが悲しいかなマイナ−に思えるところです。車椅子等、身体の不自由な人にも、もっと優しい配慮が欲しいものです。
 
まあ、全体的には多くの人々が初日から詰め掛けていることから、まずは大成功と言えるのではないでしょうか。当初、心配していたイベントの周知とか、盛り上がりについては、幸いなことに取り越し苦労に終わりそうです。
 
これも一国一校などの、市内の各学校がそれぞれの国の応援団に廻ったプラン等も、功を奏しているものです。とにかく明日からもまだ3日間あるだけに、折角の良い機会ですから、世界の巧みの技を十分堪能したいと思っています。
 
この設営ブ−スに詰めなければいけない関係で、明日のカキコミはお休みさせていただきます。 


元気そのもの

[2007年11月14日(水曜日)|No.1321]

我が社で以前、その別荘のモノレ−ル制御の仕事をやらせて頂いた、多湖輝教授の講演があるとお聞きし、会場である清水まで足を伸ばしてまいりました。
 
現在は今年から新設された東京未来大学の学長を務められているとのことで、私ぐらいかその前の年代の方々ならご存知と思いますが、もう20年ぐらい前になるでしょうか、頭の体操という本で知られている千葉大学の名誉教授です。
 
講演前、少しご挨拶をさせていただいたのですが、講演の冒頭、何よりもびっくりしたのがお元気で若々しいお姿です。特に声の力強さを感じました。1926年生まれと聞いていましたので、大正生まれの現在81歳です。
 
しかしそんな歳は微塵も感じられないほど、しっかりとした大きな声で、いろいろな話題に触れられていました。演題はこれからの中高年の生き方というものでしたが、聴衆のメンバ−を考えたのでしょう、話題はそこから離れ、政治、経済等さまざまな視点から語られていました。
 
その中から一つ、学長を現在務めるものの、以前のように学生を惹きつけられなくなっていると述べていました。講義をやる前には自信があったものの、実際蓋を開けてみたら、精々1/3ぐらいしか、まともに聴いていないそうです。
 
これは「そんなの関係ねえ」と、ほとんど裸同然の男がテレビに出てきて吹聴しているのを迎合している、今の日本の仕組みがおかしいのではないかと指摘していました。
 
そうした馬鹿なテレビを観ながら育っている年代が、何をやってもそんなの関係ねえ、俺の勝手だという世の中では、自分など相手にされようもないとの指摘です。
 
その他、日本はこのまま行ったら、中国やインドのすごいエネルギ−に呑み込まれるという、いつも私たちが考えている事柄にも触れていました。そして会場に詰め掛けたメンバ−に、中小企業が多かったこともあり、これからはやはり中小企業が主役だと、革新的事業を展開している、いくつかの例も紹介していました。
 
やはりこうした様々な問題意識を持ち続けていなければ、多湖先生のようにいつまでも若い脳で、元気でいられないのではないかというのが実感です。またご本人が言われるように、この歳でもいろいろな問題を考え続けたら夜も眠れなくなるというのも、びっくりさせられたことで、見習わなければならないことです。


最後の詰め

[2007年11月13日(火曜日)|No.1320]

予想していたとおり、日本シリ-ズでの山井投手を8回で降ろした落合采配が、いろいろと話題に取り上げられています。
 
私は一球の怖さという観点から、決してそれを否定せず、むしろ野球の流れという不可思議なものを考えているだけに肯定側の立場で眺めています。
 
それらしきものを感じたのが、アジアシリ-ズの決勝戦、8回裏の韓国・SKの攻撃です。セットアッパ−岡本投手が簡単に2アウトを取った後、次のバッタ-を四球で歩かせてしまいました。ここで何か嫌な予感がしたのです。
 
念には念を入れる落合監督ですから、ここで切り札、岩瀬投手に切り替えるかなと思いました。ところが続投させて、結果が右翼席看板にまで届くような大ホ-ムランで一気に同点です。
 
土壇場から這い上がっただけに、こうなるともう、SKの押せ押せム-ドの流れです。しかしまたその流れを変えたのがSKの9回マウンドに上がったロマノ投手です。中日の先頭バッタ−を簡単に歩かせてしまったのです。
 
そして結果として再度、中日が勝ち越し、そのまま逃げ切ってしまったのです。この試合など、まさに野球の流れの怖さをつくづく知らされたものでありました。
 
岩瀬投手に8回2死からスイッチしていたら、簡単に終わっていたかもしれません。またロマノ投手が先頭バッタ-を歩かせていなかったら、そのままSKの流れで逆転していたかもしれません。これが野球の怖さであり、面白いところなのです。
 
週に1回送っていただいているメルマガでは、遠く忘れ去ろうとしていた、かつてのヤクルト−阪急の日本シリ-ズに触れていました。好投、今井投手の必死の懇願で、上田監督があと一人投げさせたばっかりに、ヒルトンに逆転ホ-ムランを許し、その試合ばかりか、結果として日本シリ-ズを落とすことになった経緯です。
 
まさに、こうしたちょっとしたことが流れを大きく変えることに繋がってしまいます。これが豪快なプレ-の裏に隠されている野球というスポ−ツの妙味でもあり魅力なのです。また、9回2死からも、たった一球で試合がひっくり返るサプライズも潜み、残り時間で左右されるサッカ−との大きな違いでもあるわけです。
 
ただ最後の詰めを怠らないということは、この野球に限らず、私達企業にもそのまま当てはまることだと思います。何よりも結果でその判断が下されるだけに、いつも用意周到、万全体制で事に挑まなければと思っています。


請求書と領収書の人生

[2007年11月12日(月曜日)|No.1319]

暦でも立冬を過ぎていることから、今朝などはかなり冷え込みが厳しくなっていました。いよいよ冬の到来です。勝手なもので、寒くなってくると温かかった時期が恋しくなるものです。
 
12月号の雑誌「致知」に、イエロ−ハットの鍵山秀三郎さんがこんなことを書かれていました。人の生き方には二通りあるというものです。
 
請求書の人生と領収書の人生という指摘です。もっともっとと、際限なく求めて欲しがって生きるのが請求書の人生です。一方、求めるばかりでなく、今与えられている物事に感謝の心を持ちながら歩むのが、領収書の人生です。
 
向上心や探究心は人の成長に欠かせない大切な条件ではありますが、度の過ぎた欲求は人を卑しくし、ひいては国家の尊厳を傷つけることにも繋がると警告を鳴らしています。
 
そしてこの領収書型人生を送っている人は少なくありませんが、世間からあまり注目されることはなく、請求書の生き方の人が派手で目立つのに比べ、地味で人目につかないところが共通していると言われます。
 
でもいつ報われるか分からなくても、それに取り組んでいる姿からは卑しさは微塵も感じられず、人の役に立つことだけを念頭に歩み続ける姿には、人を惹きつける豊かな魅力が潜むことになるわけです。
 
どうでしょうか、かつての日本を支え続けていたのは、こうした人たちではなかったでしょうか。それが結果的には何十年、何百年という歴史を積み重ね、お店などは老舗として生き残っていたのではないでしょうか。
 
もっともっとという、目先の利益に欲が絡んだばかりに、永年の積み重ねてきたものを一瞬にして失ってしまいます。失ってみて初めてその大切なものに気づいても、もう手遅れというものではないでしょうか。やはり企業やお店が存在している以上、お役立ちという経営理念は欠いてはならない大切な要素です。


ちょっぴり感動・社員編その2

[2007年11月09日(金曜日)|No.1318]

引き続き、社員さんから提供していただいた感動のこぼれ話です。
 
① 母と子
子育てに忙しい母親の所へ、ちょくちょくその母親が駆けつけてくれます。あまりにも頻繁に足を運んでくれることから、娘が「お母さん、そんなに無理して通ってくれなくてもいいよ」と言うと、お母さんはこう話したそうです。
 
「あなたの小さい時には満足に見てやれなかったから、せめてあなたの子には面倒見てやりたいの」そして引き続き、「親というものは、いつまでも子どもに対して責任があるものなのよ」と述べたそうです。
 
② 損して得みよ
PCデポという、コンピュ-タ関連のお店での出来事です。パソコンの電源が入らなくなったので、お店に持ち込み見てもらったそうです。お店でも検査をするので、その代金として3500円支払いました。しかしそれでは解決せず、メ-カ-に送り見てもらうことになりました。
 
そして修理が完了し、送り返されてきましたが、製品が保証期間の2年以内でしたのでメ-カ-は無償修理とのことでした。助かったと思いながら製品を受け取ると、何とお店での修理料である3500円も返してくれたのです。これではお店にとっては手数料どころか送料にもならず、何か悪いような気持ちになりましたが、その対応にすっかり満足したものです。
 
③ 何気ない配慮
取引のある機器代理店から、頼んだカタログを送ってくれました。包みを開いてみたら、こちらからの問い合わせの箇所に、付箋表がついていました。何気ないことかもしれませんが、小さな親切が伝わってくるようで、ちょっぴり心の奥が温かくなりました。
 
何気ない、些細なことでも、一生お付き合いをしたくなるような出逢いが潜んでいます。それだけにいつもお話しすることですが、相手の立場になって考えてやらなければいけないものと思います。意味合いは違うかもしれませんが、自分に厳しく、相手方には、よりいたわりをもって優しく接しなければいけない必要を感じています。


経営革新塾

[2007年11月07日(水曜日)|No.1317]

商工会議所で主催している経営革新塾の講座に参加しています。これは全部で10回の講座なのですが、もう残すところあと2回となりました。当初、ご案内をいただいたとき、10回のセミナ-の日程が不思議と全部空いていた関係で、それなら参加せよというお告げではないかと思い決めたのです。
 
また今年度我が社の経営指針の発表会でも公表したとおり、社長の課題にもこの経営革新計画の申請認定が義務付けられているからです。昨夜は第8回目が行われ、ちょっとテキストから離れ、京セラの稲盛和夫会長の教訓について触れられていました。
 
経営の原点12か条というものです。稲盛会長は27歳で独立し、経営に携わってから今日に至るまで、会社経営上におけるさまざまな問題を、その都度ノ-トに書きとめていたと言われています。
 
それが現在の京セラ社員が携帯する、78項目にまとめられた京セラ・フィロソフィというものです。またこれは今後NO.2の方が真言集として出すと言われている、稲盛氏の8800ものエピソ−ドに基づいているとのことです。
 
そして78項目を更に12まで集約したのが下記の12か条です。ちょっと紹介いたします。
 
1.事業の目的、意義を明確にする
 
2.具体的な目標を立てる
 
3.強烈な願望を心に抱く
 
4.誰にも負けない努力をする
 
5.売上げを最大に、経費は最小に
 
6.値決めは経営
 
7.経営は強い意思で決まる
 
8.燃える闘魂
 
9.勇気をもって事に当たる
 
10.常に創造的な仕事を行う
 
11.思いやりの心で誠実に
 
12.常に明るく前向きで、夢と希望を抱いて素直な心で経営する

 
以上の12か条をまた敢えて3つにまとめると、1.誰にも負けないように頑張る 2.社員と一体になる 3.会計が解らなければいけない とのことです。
 
1日も休まず、この経営革新塾に通ってはいますが、目先の仕事に振り回され、ただ通っているというだけに過ぎない自分には、まだまだ経営者としての課題が多い毎日です。
 
明日は私用にて会社を休みますので、カキコミを休ませていただきます。


小沢代表辞任

[2007年11月06日(火曜日)|No.1316]

まさに青天の霹靂と言うのでしょうか、民主党・小沢代表が辞任を申し出ました。参議院選の大勝を受け、第二党の民主党に、今の政治を何とか変えてもらいたいと願っていた人が少なからずいる矢先の出来事です。
 
それだけにショックは小さくないものがあります。辞任の記者会見で、大連立を仕掛けたのはこの小沢代表側からだと、マスコミに一斉に報道されたことに強く抗議を打ち出していましたが、ある意味では不祥事が続く自民党の戦略というか、このことが絶好なカムフラ−ジュになったのではないでしょうか。
 
昨日の報道では、党内からの辞任慰留の動きに対し、涙を浮かべて感謝の気持ちを表わしたとも伝えられていましたが、依然回答保留とのことで、この先どう展開していくのか予測がつかない状態です。
 
でもこれで、一時の民主党上げ潮ム-ドには水が差されたものと思われます。仮に小沢代表がこの慰留に応じても、党内には不協和音が残ることになり、一枚岩になれるかどうかが疑問です。従って衆議院早期解散、総選挙と謳っていたものの、こうなったら話は変ってくるものです。
 
ところで小沢代表が持った、「次の総選挙で民主党が果たして勝てるかどうか判らない、現時点では力不足に思われる。それなら国民の望む政策実現に向かったら」との読みは、多くの人たちが理解を示すことができるのでしょうか。
 
ずいぶんと難しい判断のような気がします。まさに小沢代表ならではの鋭い先見性のようにも思えますが、一方では甚だ不安に見えても、自民党以外の民主党に賭ける国民の気持ちを反映しないようにも感じられるものです。
 
とにかく、政治の世界は一寸先が闇と言われているとおりの結果となってしまいました。不祥事が続く自民党を懲らしめるためにも、民主党にもう少し頑張ってもらいたいと思っていましたが、これで全く先が読めなくなったように思われます。


技能五輪国際大会に向けてその2

[2007年11月05日(月曜日)|No.1315]

15日から沼津で始まる機能五輪国際大会まであと10日となりました。昨日はこれに向け、市内一斉清掃も行われ、お迎えする地元としては最後の準備も整いつつあります。
 
友人に誘われ、午後から広告美術の部門で日本代表となっている、沼津市出身の岡田朋子さんの練習会場に応援を兼ね、行かせてもらいました。
 
裾野にあるアカツキ工房の遠藤社長が、2度の国内大会以前から、この岡田さんの指導をはじめ面倒をみているわけですが、自社の一角にわざわざ建ててくれているプレハブの練習会場です。
 
土曜日から始まったという、この本番さながらの最終練習は、大会で実施される4日間のスケジュ-ルどおりに進められていました。時間も全くそのままで、一日6時間、夕方の5時で終了するというものです。
 
私もこの岡田朋子さんの応援に出かけた、一昨年の山口、そして優勝して日本一となりこの国際大会の出場権を得た、昨年の香川大会はいずれも2日間の競技でしたが、国際大会は課題も多く、4日間という長丁場です。
 
従ってペ-ス配分も大切で、最後に少しでも時間の余裕を残そうと、遠藤さんはじめ関係の先生方の指導も熱が入ります。私も素人ながら終了の5時まで、遠藤さん達に技術的な解説もいただいていたことから、魅入ってしまいました。
 
片方の筆を定規の溝に滑られせながら描いていく、二本の筆の使い方などは本当に見事なものです。また今回課題に加わっているカッティングシ−トは、たまたま最初に貼った位置が少しずれたため、貼り直したわけですが、それによる弊害などにもいち早く気づいていたみたいです。
 
とにかく、大学に入学したばかりの若干19歳か20歳の年で、この人のどこにそんなパワ−と才能があるのかと信じられないくらい、可愛らしいお嬢さんですが、秘めているものは凄いものがあります。
 
この岡田さんの才能を早々に見出したところから、今回の国際大会に至るまでの歩みを、遠藤さんが「技能五輪への挑戦」という本を自費出版されたと聞きました。「広告美術にかけた岡田朋子の青春」が副題です。
 
とても嬉しかったのは、この本を1日前に私にも送ってくれていると聞いたからです。以前にも触れましたが、この数年、岡田さんにかける遠藤さんの思いは半端ではないものがあります。おそらく今回の国際大会に向けても、ご自身の仕事まで犠牲にしているのではないかと思われるほどです。
 
それだけに、何とか二人の執念が実ってくれることを切に願いたいものです。岡田朋子さんの数段腕を上げた技術もさることながら、遠藤さんを中心としたサポ−ト陣の温かさに触れたことから、すっかり夕闇に包まれた帰路でしたが、ほのぼのとした明るい気持ちになり、とても心地よいものでした。


53年ぶりの日本一

[2007年11月02日(金曜日)|No.1314]

中日が一気に第5戦で日本シリ-ズを決める優勝を果たしました。私は毎日夜出掛ける用事が多く、満足にその試合も観れないまま幕を閉じてしまいました。ちょっとそういった意味では残念ですが、中日が勝つべくして勝ったように思えるものです。
 
一つは先日も触れたとおり、トップである監督の姿勢の違いです。リ-グ優勝していないのだからと言って、頭を丸めてまで挑んだ宿敵・巨人を倒しても、相手への配慮から胴上げをせず日本シリ-ズを迎えた監督と、その直前にアメリカで記者会見を開き、シリ-ズとは関係ない話で生涯最良の日などと浮かれている人では、おのずと結果の違いは見えてくるのではないでしょうか。
 
とにかく中日が勝ってくれて胸を撫で下ろしました。これでヒルマン監督が日本で有終の美を飾り、母国に戻りロイヤルズの監督に就任するというのでは、複雑な思いに駆られる人も少なくなかったはずです。
 
それからMVPを飾った中村紀洋選手の活躍が光ったですね。ご存知のとおり、今シ-ズンが始まる前、前球団オリックスを追われ、2軍戦しか出場できない育成選手として中日に入団しました。そして育成選手から支配下選手に格上げしたとは言え、わずか600万円の契約金でシ-ズンをスタ-トしたのです。
 
やはりお金には代えられない男の意地があったのでしょう。そしてそこには、本人でしか到底理解できない苦労がいっぱい詰まっていたことと思えます。それゆえに日本一を果たした感慨は格別なものがあったはずです。ヒ−ロ−のお立ち台での止まらない涙はうなづけることです。
 
こうした苦労人が栄光を極めるというものは、やはりよいものです。また完全試合目前で投手交代となった山井投手については、これからいろいろと取り上げられることになるかもしれません。
 
既に野村監督など、「10人いる監督が10人とも代えることがないと思う。落合監督ならではの話」と述べていますが、私は「本人が8回を投げ終え、いっぱい、いっぱいだったと言っていた」という落合監督の言葉を信じたいと思います。
 
野村さんは続投させ、9回にヒットが1本出た段階で交代してもよいと言われていましたが、そのヒットが本塁打ならまた話は変ってきますし、非常に難しいケ-スです。過去に置いては一球の詰めを怠ったばかりに流れが相手に行き、シリ-ズがひっくり返ったということもないわけではないので、一概に何がよいとなかなか結論が出るような話ではないものと思われます。
 
とにかく中日が勝ってくれてよかったと思っています。やはり日本を代表するプロ野球だけに、外人監督が出稼ぎのような感覚で、簡単に日本一を射止めてしまったらどうかと思います。中日ファンではありませんが、53年ぶりの日本一に心から祝福し乾杯します。


ちょっと良い話part24

[2007年11月01日(木曜日)|No.1313]

癒着とか食の不信など暗い話ばかりが続いていますので、ひさしぶりにちょっとよい話を紹介いたします。「花嫁の電話」というNTTの電話明細に付属されてきたものです。
 
由香ちゃんが近所に引っ越してきたのは、まだ小学校三年生のときでした。ときどき我が家に電話を借りに来るのですが、いつも両親ではなく由香ちゃんが来るので、おかしいなと思っていたのですが、しばらくしてそのわけが解りました。
 
由香ちゃんのご両親は、耳が聞こえない聴覚障害がある方で、お母様は言葉を発することができません。親御さんが書いたメモを見ながら、一生懸命に用件を伝える由香ちゃんの姿を見ていると、なんだか胸が熱くなる思いでした。(中略)
 
由香ちゃんの親孝行ぶりに感動して、我が家の電話にファックス機能をつけたのは、それから間もなくのことでした。しかし、当初は明るい笑顔の、とてもかわいい少女だったのに、ご両親のことで、近所の子どもたちにいじめられ、次第に黙りっ子になっていきました。
 
そんな由香ちゃんも中学生になるころ、父親の仕事の都合で引っ越していきました。それから十年余りの歳月が流れ、由香ちゃんが由香さんになり、めでたく結婚することになりました。その由香さんが「おじさんとの約束を果たすことができました。ありがとうございます」と頭を下げながら、わざわざ招待状を届けに来てくれました。
 
私は覚えていなかったのですが、「由香ちゃんは、きっといいお嫁さんになれるよ。だから負けずに頑張ってね」と、小学生の由香ちゃんを励ましたことがあったらしいのです。そのとき「ユビキリゲンマン」をしたので、どうしても結婚式に出席してほしいと言うのです。「電話でもよかったのに」と私が言うと、「電話では迷惑ばかりかけましたから」と、由香さんが微笑みました。
 
その披露宴のことです。新郎の父親の謝辞を、花嫁の由香さんが手話で通訳するという、温かな趣向が凝らされました。その挨拶と手話は、ゆっくりゆっくり、お互いの呼吸を合わせながら、心をひとつにして進みました。
 
「花嫁由香さんのご両親は耳が聞こえません。お母様は言葉も話せませんが、こんなにすばらしい花嫁さんを育てられました。障害をお持ちのご両親が、由香さんを産み育てられることは、並大抵の苦労ではなかったろうと深い感銘を覚えます。嫁にいただく親として深く感謝しています。由香さんのご両親は、『私達がこんな身体であることが申し訳なくてすみません』と申されますが
私は若い二人の親として、今ここに同じ立場に立たせていただくことを、最高の誇りに思います。」
 
新郎の父親の挨拶は、深く確かに心に沁みる、感動と感激に満ちたものでした。その挨拶を、涙も拭かずに手話を続けた由香さんの姿こそ、ご両親への最高の親孝行だったのではないでしょうか。花嫁の両親に届けとばかりに鳴り響く、大きな大きな拍手の波が、いつまでも披露宴会場に打ち寄せました。
 
その翌日、新婚旅行先の由香さんから電話が入りました。「他人様の前で絶対に涙を見せないことが、我が家の約束事でした。ですから、両親の涙を見たのは初めてでした」という由香さんの言葉を聞いて、ふたたび胸がキュンと熱くなりました。

 
どうですか、とても素晴らしい話ですね。何度読み返しても胸が熱くなるものです。落語家の夢之助さんもこの話を知っていたら、きっと気が散るなどと軽率な発言はしなかったでしょうね。