会長の”三行日記”

2014.05.09

眠っていたお宝 No.2564

 我が地元である沼津市役所に、お宝発見というニュ-スが流れていました。何とその庁舎内に30年以上にもわたって眠っていて誰も気がつかなかったというのです。

そのお宝は水墨抽象画で海外にも知られる、美術家・篠田桃紅(とうこう)さん(101)という方の描いた作品で、役所内の特別応接室の壁面にあって、白いカ-テンで覆われていたから気がつかなかったというのです。

でも不思議に思ったのがこの長い期間、カ-テンを一度も開けなかったかということです。1年ぐらいの期間ならそれも解りますが、何十年も開けなかったということが信じられません。

だいいち年に一度ぐらいは大掃除をしそうなものです。ではなぜ見つかったのかというと、篠田さんのファンという親族の方から、栗原市長の家族に問い合わせがあったと言います。そして市長自身が管財課に照会し見つかったというのです。

何ともお粗末のような話です。でも何でカ-テンで隠されていたのかというのは、市が調べたところによると、「ちょっと暗い。隠した方がいい」と記された、80年前後と思われる非公式のメモ書きが見つかったといいます。

ですから以前には一部の人間だけ知っていて、そうした事実がその後、全然引き継がれていなかったのでしょう。何かお役所の体質が象徴されているようにも思えるものです。

作品の壁画は縦2・5メートル、横7メートルの大作で、購入時のリストの題名は「泉」、1966年7月に市庁舎の完成に合わせて120万円で購入し、市長への表敬訪問などで使われる特別応接室に設置したそうです。

作品は墨象と呼ばれる前衛書道の一種で、和紙に墨と筆で文字を自由な形で描いて創作するもので、篠田さんが「泉」という漢字から受けたイメージを自由にふくらませ、絵画表現として描いたとみられると言います。

ただ幸いしたのはこの応接室、南側と西側がガラス窓になっていて西日をまともに受けることから、カ-テンで覆われていたことにより作品そのものの保存状態は良いそうです。ですから何が幸いするか分からないものです。

今後、担当である市の管財課は市長の方針をも受け、この作品を一般の市民にも公開するとのことです。ですが場所が特別応接室だけに、ちょっとその公開方法が難しいとも思えるものです。とにかく作者が高齢なだけに、ご存命のうちに見つかってよかったと思います。でも作品が暗いから隠しておいた方がよいなどとは、ご本人には口が裂けても言えませんね。