会長の”三行日記”

2013.06.18

ク-デタ- No.2413

 ク-デタ-と言っても、中東シリアや揺れるトルコなどのことではありません。よくドラマなどの世界では見ることがある、社長解任劇の話です。その名も知られた川崎重工という、れっきとした大会社での話なのです。

去る13日、造船・重機大手の川崎重工業は、この日開かれた臨時取締役会で長谷川聡社長ら幹部3人を解任しました。いわゆるクーデターというものなのですが、その背景には、3人が三井造船との経営統合交渉を独断で進めていたことに対する、社内での強い反発があったようです。

従って川崎重工は同日、三井造船との統合交渉の打ち切りも決定したらしいのですが、ドラマの世界にはある、こうした解任劇が実際に行われているのを知り、結構、驚かされたものです。

その実情は解任された3人だけで経営統合の話を進めており、他の役員が知ったのは、4月時点での報道があったわずか1週間前と言われています。またこの3人を除いては、反対意見が多数を占めていたことから、その後に開かれた会議でも統合交渉打ち切りの方向で話が進められていたようです。

こうしてこの13日に予定していた臨時取締役会で、打ち切りを正式に決議しようとしていたのですが、それを察知した前社長らがその阻止を図り、議長に採決させないよう働きかけ、統合の是非を26日の株主総会後に引き伸ばし、決定しようとしていたらしいのです。

そして予定通り開かれた当日、全員の取締役の出席の下、解任の緊急動議が提出され、3人の解任と統合交渉打ち切りが決定したのですが、わずか35分で終了したとのことです。まさしくドラマの世界ですね。解任された前社長らの慌てぶりが目に見えるようです。

川崎重工と三井造船の統合話が持ち上がった報道直後、川崎重工の株価は下落したそうですが、この13日以降、統合が打ち切りと知らされると川重の株価は上がり、三井造船は下がるという皮肉な結果が表われています。

ですから市場の動きは統合には否定的のように見えるものですが、川崎重工の造船部門は全体の売上高の1割にすぎないということから、造船部門での中国・韓国との国際競争という視点を除けば、全体的にはメリットが小さいと判断されたのではないでしょうか。

また解任の13日以前、会長からも前社長に対し、役員間の対立を収めるため、穏便に解決を図るからと言って辞任を迫っていたようですが、これにも耳を貸さなかったみたいです。ですから3人以外の全てを敵に回してしまったのではないでしょうか。

とにかく、あまり格好の良い話ではありません。これでは当初、今月の26日に開かれる予定になっていた株主総会もどうなることだか判りません。今回のことで独善的にことを進める危うさと、企業内コンセンサスをとらなければいけない大切さを教えられました。それにしても一方的に統合を打ち切られた三井造船は、さぞ困っていることでしょうね。