会長の”三行日記”

2012.11.05

貴重な補欠 No.2305

今朝の朝日新聞に西武ライオンズの平尾博嗣選手の引退記事が載っていました。既に先月の1日に引退を発表しているのですが、阪神・金本選手やソフトバンク・小久保選手らの華やかな引退とはちょっと違っているようです。
 
それと言うのも、ずっとレギュラ-を張り続けていた両選手と違い、あまり出番に恵まれなかった補欠だったからです。それも必要とされ続けていた貴重な補欠だったのです。
 
野球通の人が平尾選手と聞けば、かつて大宮東高時代、高校屈指のスラッガーと言われ、通算68本もの本塁打を放ち、選抜大会でも先頭打者本塁打などで母校を準優勝に導いた、センスあるプレイヤ-だと知られているところです。
 
でもドラフト2位で阪神入団後、ケガなどの影響もあり、周囲の期待通りの成績も収められず、伸び悩んでいました。そして西武へとトレ-ドに出されるのですが、移籍直後に内野ファ-ルフライを追い掛けフェンスに激突しての骨折の影響で、1年以上もリハビリに費やすのです。
 
その後、元々器用だったのでしょう。内野ならどこでも守れる選手として起用されるのですが、一番多いシ-ズンでも227打席しかなく、規定打席(144試合の場合446)には遠く及ばない、フル出場は果たせなかったのです。
 
それでも持ち前の勝負強さを発揮することが多く、2008年の日本シリ-ズでは大活躍し、チ-ムの日本一に貢献するシリ-ズ優秀選手賞にも輝いているのです。
 
そしてここ数年は代打の切り札として貴重な存在だったのですが、やはり度重なる体の故障の影響もあり、満足の行くシ-ズンは送れませんでした。
 
しかし通算打撃成績を眺めると、392安打を放ち196打点と、ヒット2本に1回は適時打ということになります。その勝負強さはどこから来ているものなのか、記事は次のように紹介していました。
 
試合開始の6時間前には誰もいないグラウンドに来て、ランニングやティー打撃を黙々とこなす。2時間後、全体練習が始まるころには、野手最年長はすでに汗だくだった。 

一度、テレビ局がその姿を撮りたいと申し出たが、かたくなに拒んだ。「人に見せるためにやってるわけじゃないから」。ファンの前では“チャラい”男を演じ続け、試合を決める一振りで球場を沸かせた。
 
 
そして1軍選手の平均寿命が約9年と言われる厳しい世界で、「補欠」なのに20年近く必要とされ続ける選手も、そう現れないだろうと結んでいました。いわゆる華々しい活躍は少なかったと思われますが、こうした玄人好みの選手が去っていくのもまた寂しいものです。
 
ケガなどの故障に悩まされ、本来の素質が十分開花することなく去ることになるわけですが、それでも長く必要とされ続けたのは、やはり人知れない練習の賜物ではなかったでしょうか。これからの人生に幸ありと祈りたいものです。