会長の”三行日記”

2011.12.08

あなたへ No.2124

被災者の方々はこの寒い冬を迎えて、どんなに厳しい思いをされているのでしょうか。この震災で亡くなった旦那さんに奥さんからの「あなたへ」という手紙です。
 
ひぐらしがうるさい位鳴いています。きょうは八月二十一日、日曜日、お盆を過ぎて街は静かになりました。あなたが突然いなくなって五ヶ月と十日、もう五ヶ月、まだ五ヶ月ととても複雑です。

あの日忘れようにも忘れられない東日本大震災が起きました。あなたは迎えに行った私と手を取り合った瞬間、凄まじい勢いで波にのまれ私の目の前から消えました。

いったい何処へいってしまいましたか。あの時から私の心はコンクリ-ト詰めになり、山々が新緑に覆われても桜が咲いても、何も感じることができず、声を上げて泣くことすらもできずにおります。

そして息子達も私も語り尽くせぬほどの様々の事があって今日に至ります。突然いなくなったあなたに伝えたいこと、聞いてもらいたいことが山ほどあって、心の整理がつかないけれど手紙を書くことにしました。

お店のこと心配していますか。お店はたくさんの方々の応援をいただいて四月二十三日仮店舗をオ-プンしました。13坪の土地に3坪のプレハブ、テントをひと張り、混乱の中で息子達はほんとうによく頑張りました。

そのお店の真向かいには一軒家も借りることができ、家族五人で暮らしています。全国の皆さんからはたくさんの支援をいただいてその上素晴らしい方々とも出会うことができました。

また私が書いたお酒の「負けねえぞ気仙沼」のラベルがとても好評で、多くの方々に買って頂いています。ある方に「これは旦那様が書かせてくれたのよ」と言われました。

私もきっとそうだと思っています。何も言えずに別れてしまったから、ありがとうと伝えたくて切なくて悲しくて、どうしようもないけれど、38年間一緒にいてくれて仲良くしてくれてほんとうにありがとう。

守ってくれて支えてくれてありがとう。感謝しています。これからはあなたが必死で守ってきたお店ののれんは、私が息子達と守ります。大丈夫です。あなたはきっと何処かで、私達のこと見守ってくれているのでしょう。

季節の巡りは早く、間もなく涼風が吹いて秋がやってきます。願わくは寒くなる前に、雪の季節が来る前にお帰り下さい。何んとしても帰ってきて下さい。

家族みんなで待っています。私はいつものように、お店で待っています。只々ひたすら、あなたのお帰り待っています。

 
手を取り合った瞬間に、津波に呑まれて目の前からいなくなってしまったのでは、何ともたまらない思いでなかなか心の整理がつかないのではないでしょうか。このような方がもっといっぱいいられることと思われます。
 
あまりにも運命の残酷さが伝わってくるものです。この手紙が書かれてから、もう4ヶ月近く経ちます。宮城県気仙沼はもうすっかり厳しい冬が訪れていることと思います。
 
厳しい寒さの中でほんとうに大変だと思われますが、生きている方々が精一杯頑張って努めていくことが、亡くなった方への供養にも繋がるのではないでしょうか。
 
明日は早朝より静岡及び平塚に出張のため、カキコミは休ませていただきます。